『あの夏のルカ』製作期間は約5年 ピクサー初のリモートワークならではの苦労が明らかに
ディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)で独占配信中の『あの夏のルカ』の制作秘話が明かされた。
本作は、第84回アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされた、ピクサーの短編アニメーション『月と少年』を手がけたエンリコ・カサローザ監督が、美しいイタリアの港町を舞台に描くサマー・ファンタジー・アドベンチャー。
「海の世界」と「人間の世界」、互いに恐れ合っている2つの世界が舞台。海の世界に暮らす“シー・モンスター”の少年ルカは、絶対に行ってはいけないと禁じられている人間の世界への憧れを抑えきれず、親友のアルベルトと海の世界を後にする。身体が乾くと人間の姿になるという性質を持つ“シー・モンスター”の彼らは、この“秘密”を人間に知られる恐怖を抱きながらも、目の前に広がる新しい世界に魅了されていくのだ。やがて、ルカとアルベルトの無邪気な冒険は海と陸とに分断されてきた2つの世界に大事件を巻き起こすが、ルカの禁断の憧れが生んだ「ひと夏の奇跡」とは。
これまでのピクサー作品は、通常約3〜4年ほどの製作期間を費やしており、物語の設定やストーリー構成、キャラクターデザイン、ナレーションなど作品を完成させるにおいての過程それぞれに時間をかけてきた。『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などは約4年の製作期間で作られた作品だが、『あの夏のルカ』はそれを上回る約5年の製作期間に。本作で初めて長編映画の監督を務めたカサローザは、映画を完成させるにおいて「“5年という期間の長さ”が一番大変だった」と語っている。
さらに本作では約1年間、新型コロナウイルスの影響でピクサー初のリモートワーク製作となり、ショットの作成やレコーディングなど様々な過程がリモートで行われたことが明かされた。
ピクサーは2020年3月からコンピューターとコードを持ってオフィスを出て、約1年間のリモートワーク製作をスタート。すべてのショットを自宅で作るほか、一部の俳優はレコーディングまでもが自宅で行われた。普通であればレコーディングはサウンドシステムが整ったスタジオで行うのが基本だが、アルベルトを演じたジャック・ディラン・グレイザーは自宅の“クローゼット”でレコーディングしたことをプロデューサーのアンドレア・ウォーレンが明かした。
ウォーレンは「毎日子供がよじ登ってきたり、ペットがいたりする中で格闘したり、地下室のキッチンの隅で仕事をしたりする人がいました」と語ったうえで「リモートでの製作はミラクルのようにも感じますが、その言葉は決して適切ではありません。これを達成するには、相当な楽観的姿勢、柔軟性、ユーモア、仕事熱心さが必要とされました。毎日一生懸命仕事をしてくれたチームのみんなには頭が下がります」とピクサー社員への感謝を語った。
また、今回のリモートワークは本作の舞台となる北イタリアの美しい港町“ポルトロッソ”を描く上でメリットにつながったこともあると、製作チームが語った。カサローザ監督が実際に幼少期をイタリアで過ごした時期の記憶や、製作陣で新型コロナウイルスのパンデミック前に行ったリサーチトリップなどをもとに、“イタリアの夏”が再現されている本作では、場所だけでなく住人を描く際にも動きなどの特徴に実際のイタリア人が参考にされている。本作のアニメーションスーパーバイザーは「リモートワークをしたことで、パソコンを通してイタリアのディズニースタッフとミーティングをすることができ、ジェスチャーなどを目で見ることができたので、イタリア人らしい身振り手振りを作品に入れられた」と作品を描く上でリモートワークならではのメリットがあったことを明かした。
第84回アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされたピクサーの短編アニメーション『月と少年』を手がけ、アカデミー賞受賞作品『カールじいさんの空飛ぶ家』のストーリー・アーティストを始め、『リメンバー・ミー』『トイ・ストーリー4』など様々な作品に参加してきたカサローザ監督。本作については、「子供の頃に自分とは全く違う世界に住む少年と夏に出会ったんだ。その夏の思い出から、少年が大人へと成長する物語を作りたいと思ったんだ」と明かしている。
■配信情報
『あの夏のルカ』
ディズニープラスにて独占配信中
監督:エンリコ・カサローザ
製作:アンドレア・ウォーレン
日本版声優:阿部カノン(ルカ)、池田優斗(アルベルト)ほか
日本版エンドソング:「少年時代(あの夏のルカ ver.)」suis from ヨルシカ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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