『きみセカ』などのサバイバルホラー 生死を分ける“法則”と、キャラ人気への密接な関係
ところで、結局生存したキャラと死んだキャラ、どちらが人気になり得るのかについて少し考えたい。なにせ、どのキャラクターも映画の中で必死に生き残ろうとするし、日本を代表する助演者が集まった実名ドラマ『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』(テレビ東京系)では、サスペンスの現場の裏側で「死ぬ役だとすぐ出番がなくなってしまうから」という理由で一種の不名誉な扱い方をされていた。さて、本当に死に役は不名誉なのだろうか? 死なない主役 “ファイナルガール”の人気の方が絶対的に高いのだろうか?
正直、どちらが人気かという測り方は難しい。生存者は当然物語を先に進めてくれる大きな役割を担うし、死者は一方で作品の中で大きな見せ場を作ることができる。ゾンビ作品に話を戻すが、例えば『新感染 ファイナル・エクスプレス』にも見られるように、何かを守り抜くために自己犠牲を払って死んだ登場人物の方が圧倒的に印象に残るし、作品のなかでも人気を博す印象にある。言ってしまえば、この人気度はその活躍によって稼いだ“ポイント制”によりけりなのだと思う。
『Dead by Daylight』というゲームがある。これもまた、先に紹介したようなスラッシャー/ホラー作品を踏襲したような内容で、そういったジャンル映画に出てきそうなプレイヤー4人(サバイバー)が殺人鬼(キラー)から逃げて生き延びるサバイバルホラーゲームだ。サバイバーは必要数の発電機を回して、出口を開ける。その間、殺人鬼との追いかけっこや仲間へのサポート行為を含め、タスクをこなしていくとそれがブラッドポイントとして数値化し、レベルアップに繋がっていくのだ。重要なのは、このブラッドポイントが決して生還した者のみが高い、という結果にないことである。つまり、最終的に死んだとしてもそれまでにたくさん活躍をすれば、むしろ何もしないで生還したプレイヤーより多くのポイントを獲得することができるというのだ。これはまさに、先述の映像作品における人気度の反映と同じ構造と言える。
そういった意味で『君と世界に終わる日』のシーズン2では、元自衛隊員の桑田や甲本が人気高いキャラクターとしてその死に反響があったのにも納得ができる。死んだから人気なのではなく、死ぬ前の貢献度、見せ場の問題なのだ。特に桑田は作品全体を通して誠実で、シーズン1では駐屯地に属していたが、自衛隊として人命救助を第一に行動し、組織の怪しさに気づくと間宮側の仲間になる。まさに好感度しかない「良→良」のキャラクターで、死に様もそれが一切崩れないものだった。一方、甲本の場合は「悪→良」のキャラ。最初は性格が悪くて利己主義で嫌われ者だったのに、話数が進むごとに心を入れ替えて、最終的に善人として死ぬパターン。これもまた、ポイント数がかなり高い。これに対して生き残る方も、その後の貢献度と見せ場で人気が変わっていくのだから、おちおちとゾンビ相手に戦っているだけじゃ済まないのも大変だ。
正直、“誰が死んでもおかしくない”のが売りの作品でも、鑑賞者の目が肥えれば肥えるほど、メタ視点で安全そうな登場人物と、見せ場を作って死にそうな人物に気づきやすくなってしまう。だからより一層、今後はクリエイターが作品の中に住むキャラクターと一丸となって、そういった鑑賞者に一泡吹かせるような生き様、死に様を魅せてくれるドラマや映画が増えていくことになりそうだ。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。湖畔でキャンプがしたい。Instagram/Twitter
■配信情報
『君と世界が終わる日に』
Season1(全10話)・Season2(全6話):Huluにて全話独占配信中
出演:竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、本郷奏多、吉沢悠、真魚、三浦りょう太(※三浦りょう太のりょうはけものへんに寮のうかんむりなし)、キム・ジェヒョン
脚本:池田奈津子
音楽:Slavomir Kowalewski、A-bee
制作:福士睦、 長澤一史
チーフプロデューサー:加藤正俊、茶ノ前香
プロデューサー:鈴木亜希乃、高橋浩史、伊藤裕史、山田信義
協力プロデューサー:白石香織
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充
制作協力:日本テレビ、日テレ アックスオン
製作著作:HJ Holdings,Inc.
(c)NTV/HJホールディングス
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