『殴り愛、炎』拳で語る姿が生むドラマツルギー 鈴木おさむイズムがエスカレートした後編

 どんな顔をして『殴り愛、炎』(テレビ朝日系)を観ればいいのか? 無垢なヒロインをめぐって男たちの拳が舞うドロドロの恋愛サスペンス。と思わせて、刺激的なカットと振り切ったセリフの応酬で極限までドーピングされたジェットコースター級の展開を目の当たりにし、筆者の胸に去来したのはそんな思いだった。

 山崎育三郎の「ここにいるよー!」で『奪い愛』シリーズの正統後継者であることを宣言した前編。「あいつに汚された唇を浄化しよう、僕の唇でさ」、「裏切ってなんかナッシングだよ」。字面のインパクトだけで卒倒しかけ、酒井若菜の「ひ・め・ご・と」の破壊力に動揺しながら、気力を奮い起こして画面を凝視する。記憶除去術、泥棒陶芸家というパワーワードも飛び出し、登場人物の一挙手一投足に目が釘付けになる。

 後編に入り、登場キャラクターの狂いっぷりはますますエスカレート。酒井演じる家子がしばしば光男(山崎育三郎)以上にリミッター超えの怪演を見せる。「秀実を奪いなさいよおーー!!!」の絶叫から、逃避行の秀実(瀧本美織)と信彦(市原隼人)を追って、ハイエースで乗り付けてシェパードを放つ場面は確信犯そのもの。光男の両親役、西岡徳馬と石野真子による嫁いびりやトレンド入りした市原の棒高跳びなど、「こんなのあり?」なギミックの連発で、すがすがしいほど作家の趣味性全開で迫っていく。

 記憶を失くしたヒロインの恋の行方も見てみたかったが、クライマックスは腕力が語る男と男の勝負に。殴り合いのドラマツルギーという理屈を超えた映像の力でゴタゴタ、ドロドロをスカッと吹っ飛ばした。主筋に関係ない部分を省略することで目まぐるしい超展開を実現した『奪い愛』シリーズに対して、『殴り愛、炎』は物語の因果を大胆に跳躍しながら、ワンシーンの説得力がドラマを成立させることを証明していた。もちろん結末に至る感情の連鎖や個々の役作りがあった上での話である。