長瀬智也の役者人生を振り返る 『白線流し』に『IWGP』、『俺の家の話』に至るまで

「ブクロサイコー!」大ヒット『IWGP』から、役名でCDリリースした2000年代

 宮藤官九郎との相性の良さをみせつけたのが2000年放送『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)。池袋を舞台にカラーギャング集団のトラブルなどを解決するトラブルシューターとして頼られるマコトを熱演。日常をコミカルに描く一方で、容赦ない壮絶なシーンもあり。ギャング集団の抗争が白熱していく中でも、ブレない芯を持ち、人思いなマコトと長瀬には重なるものがあった。

 2001年放送の『ムコ殿』(フジテレビ系)では、“抱かれたい男No.1”に輝く大人気シンガーソングライター・桜庭裕一郎を演じた。表舞台でみせるクールな顔とは違い、実は可愛らしい性格の裕一郎は、竹内結子演じる新井さくらと結婚したが、新井家の婿養子という秘密を抱えていたという設定。ラブソングを雰囲気たっぷりに歌い上げるクールなトップスターと、さくらにデレデレでちょっと頼りないけれどハートは熱い夫との、2面性を上手く演じ分けていた。なお、桜庭裕一郎が歌う劇中歌「ひとりぼっちのハブラシ」もリリース。劇中の登場人物がCDデビューするのは当時としても珍しい取り組みであり、後に事務所の後輩たちも続いた。

 2005年には『タイガー&ドラゴン』(TBS系)でヤクザで噺家の山崎虎児を、翌2006年には『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)で、27歳で高校に入学したヤクザの若頭・榊真喜男役を演じた。182センチの長身に加えて、表情や発声を操り迫力ある演技をみせるが、胸に熱いものを秘めている様が伝わってくるのは、長瀬ならではの演技と言える。

 今年1月に出演した『ぴったんこカンカン』(TBS系)で、過去の出演作品を振り返った長瀬は、「まともな役が1個もない」と笑みを浮かべながら語っていた。言われてみれば、深く印象に残っている作品は風変りな役が多い。しかし、役どころの肩書きや経歴はともかく、演じた人物の人間味に溢れる姿に胸を打たれた。

 『タイガー&ドラゴン』(TBS系)のラスト、虎児が「タイガータイガー……」と放つと、「じれったいがー」と観客が声を揃える。マイクをもってさらに「タイガータイガー」と続け、会場が感涙しつつ一体化していくのだが、長瀬にはそんな風に観る者を惹きつけるものがあった。

 TOKIOの長瀬として、最後の出演作品となった『俺の家の話』。テーマは自分の父親の介護。そしてまさか、まさかの展開をみせた寿一の最期。事務所を退所することが決定する前から結末は決まっていたというが、物語と長瀬が打ったピリオドが重なるミラクル。なんとも彼らしい幕の引き方ではないか。

 デビュー前にアイドル雑誌に登場していた当時はサラサラの長い髪が印象的で、姉と一緒に登場したこともあった。TOKIOのデビュー当時は短パンでタンバリンを持っていた長瀬。楽器はギターに変わり楽曲制作に携わるように。演じる役どころも、バイプレーヤーから圧倒的存在感を放つ主演へと変わっていった。

 長瀬の出演作品とともに年齢を重ねてきた視聴者も少なくないだろう。今後もいつかどこかで、長瀬が携わった作品がみられることを期待しつつ、まずはこれまで沢山の物語に出会わせてくれたことへの感謝を伝えたい。

■柚月裕実
Web編集者/ライター。企画、担当編集、取材・執筆してます。
日本の男性アイドルの頑張りを見ては涙する30代。
始まりはSMAP中居さん。 KAT-TUN、NEWS中心の事務所担。年中HDDの整理と原稿書きに追われています。

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