『天国と地獄』“入れ替わり劇”の根底にあるコロナ禍の現在 北村一輝×柄本佑にも要注目
1組目は、河原(北村一輝)と彩子。「セク原」こと河原は初回においてやたら際どい「息子」に纏わる発言を繰り返していた。一方、第2話以降は日高の身体になった彩子が、男性である自分の身体についている物珍しい「それ」を巡って、風呂場で、あるいはテレビの前で、コミカルな七転八倒を繰り広げる。男女の入れ替わり劇において、互いの身体的特徴を巡って起こるコメディは鉄板ネタであるが、日高と対になっているのではなく、河原と対になっているのが興味深い。また、「風紀委員」彩子と、「セク原」河原は、仕事の仕方も含めて正反対の人物だが、事件をどこまでも追い続ける執念深さはよく似ている。
もう1組は、日高と陸(柄本佑)。彩子にとっての「悪魔」日高を「天使」と呼んだ、日高と「相性」がいい彩子の同居人・陸もまた、「清掃人」であることもそうだが、日高と多くの共通点がある。
日高を新たな殺人に駆り立てた契機である、赤いスプレーで壁に書かれた「4」の文字。その壁は、日高に何らかの指示をしている存在との意思疎通の場ではないかという推測ができる。一方、便利屋として指示を受け、その「4」を消す陸。赤いペンキを洗浄剤で洗い流している様は、初回の殺人における凄惨に流れただろう血と、綺麗すぎる洗浄された後の床を連想させ、さらに、気分が高揚した日高がペットボトルの水を一気飲みする光景が重ねられるから余計に怪しい。
予告を観る限りでは、ついに河原、陸共に動き出しそうな第4話。「男と女」「善と悪」それぞれの複雑な交錯は、我々をどんな世界に連れて行ってくれるのだろうか。
■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。
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■放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
TBS系にて、 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
製作著作:TBS
(c)TBS