長瀬智也×宮藤官九郎のタッグにハズレなし! 『俺の家の話』第1話から快作の予感

 『池袋ウエストゲートパーク』や『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』と、TBSの金曜ドラマ枠で放送される宮藤官九郎脚本・長瀬智也主演ドラマにはハズレなしと、もう断言してもいいだろう。昨年夏に、この3月にジャニーズ事務所を退所して裏方として新しいスタートを切ることを発表した長瀬にとって、おそらく最後の連ドラ主演作となるであろう『俺の家の話』(TBS系)が1月21日に始まった。先に挙げた作品以外にも、数えきれないほどの傑作ドラマをより面白くさせてきた長瀬の演技もこれで見納めになるのかと考えると寂しい気分になるが、第1話を観る限り、その花道として相応しい快作の予感がただよっているではないか。

 二十七世観山流宗家であり重要無形文化財「能楽」保持者の人間国宝である観山寿三郎(西田敏行)を父に持ちながら、“ブリザード寿”のリングネームでプロレスラーとして活躍していた寿一(長瀬智也)の元に、寿三郎が危篤だという報せが届く。25年ぶりに実家に戻った寿一を待っていたのは、妹の舞(江口のりこ)と弟の踊介(永山絢斗)で、相続や跡取りのことばかり気にする2人に激昂した寿一は、二十八世宗家を継ぐことを決意。しかし寿一が引退試合を終えるや寿三郎が退院。余命半年と宣告されたという寿三郎は、ヘルパーのさくら(戸田恵梨香)と結婚し、彼女にすべての遺産を相続することを宣言するのである。

 年老いた寿三郎を兄妹弟3人と芸養子の寿限無(桐谷健太)らで介護するということに加え、第1話の終盤で寿三郎に認知症の傾向があることが明らかになる。さらには寿一の小学5年生になる息子・秀生(羽村仁成)は学習障害を持っていたりと、描かれるテーマは極めて現代的であり、それでいてかなりヘビーなものである。しかしそれをいかにしてコメディ色の強いホームドラマに仕上げていくかというのは、まさに宮藤の腕の見せどころであろう。

 とりわけ寿三郎が、おもむろに能『羽衣』を謡いあげると、寿一たち兄妹弟がすっと背筋を伸ばし、一緒にいたさくらが「呪いの儀式が始まったと……」と怯む場面は伝統芸能を現代劇のコメディの中に組み込むことに成功した実に秀逸な場面であったと思える。思い返してみれば、『タイガー&ドラゴン』では各エピソードが毎回サブタイトルで掲げられた古典落語の演目の内容と結びつき、高座に上がった長瀬演じる虎児がそれに実体験を加えながらしゃべるという構成になっていたわけだが、本作ではそこまで直接的で明確なリンクは見受けられない。

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