杉咲花、『おちょやん』で体現する王道朝ドラヒロイン像 泣き笑いの演技で新たなステージへ

 このシーンの杉咲は千代を演じながら、劇中でさらに千代として役を演じるという2重の芝居をしている。千代として芝居が巧み過ぎても駄目で、演技素人として光るものがなさ過ぎても駄目。千代は緊張のあまり台詞が飛んでしまい、自分の本音をそのまま役の言葉として発する。

「嫌や! うちはどこにも行きとうない! ずっとここにいてたい。岡安にいてたいんや! もう一人になんのは嫌や……」

 芝居を超えた千代のまっすぐな思いが観客の心を動かしたと同時に、『おちょやん』を観ている視聴者の心も動かした。泣き芝居でありながら、どこか滑稽さもあり、それでいて芯の強さを感じさせる芝居。過去の杉咲の出演作の中でもここまで感情をむき出しに、しかもまっすぐに届ける演技はこれまでなかったように思う。

 随所に挟まれるドスの利いた関西弁、アドリブ(?)と思われるコミカルな動きもこれまではあまり見ることができなかったもの。まだ始まって5週だが、ここまで喜劇をものにできる役者だったことに驚くばかりだ。

 第5週を終えて、いよいよ千代は本格的に女優への路を歩みだす。劇中劇が増えていくと思われる中盤・後半、さらなる杉咲の凄さが見られそうな気がしてならない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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