千代に名女優の片鱗? 『おちょやん』新しい母・宮澤エマとおはぎをめぐってバトル勃発
連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)第2話。さわやかなエールを響かせた前作から一転して、2020年度後期の朝ドラは主人公の苦労をユーモラスに描く。
栗子(宮澤エマ)を連れ帰ってきたテルヲ(トータス松本)。新しい母を迎えて、千代(毎田暖乃)は「これからは、あの人に家のことやってもらえんねんな」と喜ぶ。実母のサエ(三戸なつめ)が幼い頃に亡くなり、食事の支度や鶏のエサやり、弟の面倒を一手に引き受けてきた千代。栗子が来たことで「学校に行ける」とはしゃいでいたが、その思いは空しくも踏みにじられた。
養鶏を営んでいたが極貧の竹井家。その原因はテルヲにあった。子どもをほったらかしにして飲み歩くテルヲは毒親でしかないが、そういう人に限ってなぜか異性にはモテる。博打に負けて身ぐるみはがされたテルヲの前に現れた栗子。テルヲにとって運命的な出会いだったが、千代には最悪の継母だった。
栗子を演じているのは宮澤エマ。先ごろ公演が行われた『女の一生』やブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』日本キャスト版 Season2のヒロイン・マリアなど舞台をメインに活躍している。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)にも主人公の妹・阿波局としてキャスティングされており、活躍が期待される一人だ。
まったく家事をしようとしない栗子。「お母ちゃんは何すんね?」という千代に、栗子は平然と「なんも」と答える。あろうことか千代が弟・ヨシヲ(荒井陽向)のために持ち帰ってきたおはぎを食べてしまうのだ。口をあんこまみれにした栗子に怒り心頭の千代。鶏の流星丸が鳴いたのは、バトル開始の合図だったのだろうか? 鬼の形相の千代に、栗子は「そねに大事やったら名前書いとき」と悪びれることなく言い返す。
とても悲惨な境遇を喜劇のタッチで描く『おちょやん』。名女優の片鱗は、教室でも垣間見えた。弁当を賭けて勝次(原知輝)とかけっこ勝負するが負けてしまった千代。約束どおり弁当を差し出すが、そこには何もない。「だましくさったな!」と怒る勝次に告げ口されそうになり、千代はとっさにウソ泣きする。その言いぐさが最高だ。
いわく「小林がおはぎ分けてくれようとしたけど、意地を張ってしまった」。それだけでも十分すごいが、「ほんまはうれしかったんや。堪忍な」とダメ押しする。目を潤ませて担任の玉井(木内義一)を泣き落とす一連の演技は、まごうことない名女優のそれだった。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/