広瀬すず、大竹しのぶ、成海璃子、高橋克実らが熱演! 『世にも奇妙な物語』が投げかけた幸福の形
『イマジナリーフレンド』
一般的に幼少期に現れるという空想上の友達“イマジナリーフレンド”を題材とした3作目の主演は広瀬すず。広瀬は、臨床心理学を専攻する大学生の原田早希を演じた。早希は幼なじみの友達がいじめに遭っているにもかかわらず、何もできない自分への劣等感から幼い頃に見えていたイマジナリーフレンドのユキちゃんを生み出す。ユキちゃんはうさぎのぬいぐるみの姿を借りた愛らしいキャラクターだが、時として早希を恐ろしい現象に巻き込む一面も持ち合わせていた。実際に心理学では、イマジナリーフレンドが本人の意思に逆らって暴走する危険性も明らかとなっている。
なぜユキちゃんは友達である早希を傷つけようとするのか、なぜ今になって早希の目の前に現れたのか。それは、ユキちゃんの正体が幼い頃に亡くなった早希の姉であり、悪い同級生から騙されそうになっている彼女を心配していたからだった。そうとも知らずイマジナリーフレンドの存在を疎ましく思った早希は真実を知り、ユキちゃんに消えないでと願う。けれどイマジナリーフレンドは心の成長を手助けする存在であり、いつかは消えゆくもの。「本当に大切なものは目に見えない」。『星の王子様』のセリフを残して消えたユキちゃんの言葉を胸に、早希はいじめられていた幼なじみを救った。目には見えない存在を相手に、豊かな表情を見せた広瀬の演技力が光る1作。他の3作とは異なり、ハッピーエンドで終わった『イマジナリーフレンド』は心温まる人間ドラマを見せてくれた。
『アップデート家族』
最後は、高橋克己が哀愁漂う父親をコミカルに演じた『アップデート家族』。普段から私たちはスマホやアプリをより快適に使用するため、頻繁にデータを最新の状態へ更新し続けている。本作はその“アップデート”が人間にも適用できたら?という実験的な作品だった。
高橋扮する黒崎家の父・睦夫は、折り込みのチラシで見つけた「ファミリーアップデーター」という新製品を使い、自分の家族を理想的な姿に変えていく。稼ぎの少ない自分にキツくあたる妻は5人の美しく従順な妻に、反抗的な長男は幼い次男と併せて新たな生き物“アニョート”に。クスリと笑える展開ではあるが、自分の大切な家族が全く別の姿形になっても幸せそうな高橋の不気味な笑顔に身の毛がよだつ。
また、本作で注目だったのは黒崎家の長女役・吉川愛の怪演ぶり。彼女は父の暴走にテンポ良くツッコミを入れる役割を担いながら、最終的に自分もファミリーアップデータを活用し、父を理想的な姿に変えるというもう一人の主人公を見事に演じきった。最初はアップデートに翻弄されていた女の子が激昂する姿に誰もが震えたことだろう。何より家族に理想を押し付けた父親が自分もアップデートされてしまうなんて皮肉な展開だ。
4つの物語を通して、幸福とは何かを問いかけた『世にも奇妙な物語’20秋の特別編』。今年は現実世界でも幸せの定義が大きく揺れた一年だっただけに、私たちの心にも物語の結末が教訓となって返ってきた。大切なのは特別な能力はなくとも、己が持てる底力で本当に望む道を切り開いていくことなのかもしれない。私たちはみんな、500兆分の1の確率で生まれた命なのだから。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter
■作品情報
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語 ’20秋の特別編』
フジテレビ系にて、11月14日(土)21:00~23:10放送
ストーリーテラー:タモリ
『タテモトマサコ』
出演:大竹しのぶ、成海璃子、森高愛、小松和重、佐伯大地、浦まゆほか
脚本:山岡潤平
原案:荒木哉仁
演出:小林義則
『アップデート家族』
出演:高橋克実、吉川愛ほか
原作:『アップデート家族』チョモランマ服部(集英社『ジャンプルーキー!』)
脚本:向田邦彦
演出:北坊信一
『コインランドリー』
出演:濱田岳、岡崎紗絵、コロッケほか
原作:『ロッカールーム』鈴木祐斗(集英社『少年ジャンプ+』掲載)
脚本:遠山絵梨香
演出:松木創
『イマジナリーフレンド』
出演:広瀬すず、堀内敬子、岐洲匠、横田真悠、夏子ほか
脚本:荒木哉仁
演出:植田泰史
編成企画:渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース:小林宙、中村亮太
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kimyo/