『共演NG』は今期一番のアツい作品に “テレビドラマのリアル”を攻め続ける面白さ
王道胸キュン『この恋あたためますか』(TBS系)や、コロナ禍をラブコメに転化した『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)のテンポの良さには掴まれるし、『ルパンの娘』(フジテレビ系)のブッ飛びぶりもやっぱり刺さる。が、あえて言いたい。今期1番アツいのは『共演NG』(テレビ東京系)で決まりです!と。
泥沼の末に別れた大物俳優と大物女優が25年の時を経て恋愛ドラマでまさかの共演。さらに時代劇の大物スターとニューヨーク帰りの元付き人、特撮出身俳優と2.5次元俳優、元アイドルグループの先輩&後輩など「共演NG」な出演者たちが入り乱れ、つねに撮影現場は大わらわ。さらに彼らを取り巻くスタッフ陣も一筋縄ではいかない人物ばかりで……。
初回の平均世帯視聴率は6.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、テレビ東京月曜22時枠のドラマとしては最高値。キャストの怪演に加え、ラストの提供クレジットで同業他社が並ぶなど、すべてにおいてに攻め感満載の『共演NG』。ひと言で言って最高!である。
そんな本作で芯を担うのが中井貴一と鈴木京香。中井が演じるのは20代半ばでスターダムにのし上がり、長きに渡って「結婚したいタレントランキング」でトップの座を維持した人気俳優・遠山英二。そして鈴木は劇団出身でありながら、映画の世界で花開き、アラフィフとなった今では「上司にしたい女優ランキング」で上位を獲る実力派女優・大園瞳を演じている。
遠山英二と大園瞳は25年前の共演ドラマ『愛より深く』でブレイクし、私生活でも恋人同士となるものの、遠山の二股交際が発覚し、泥沼別離という地雷だらけの関係だが、彼らを演じる中井貴一と鈴木京香に共演経験はあるのだろうか。
ここで浮かび上がるのが“あの男”の存在である。
ふたりが“あの男”の映画で共演したのが2008年。ただ、この作品では映画スターと劇中映画の登場人物という役柄で絡みはなく、本格的に……というか、約2時間カメラを止めずに山中で二人芝居を繰り広げたのが2011年。この時はテレビマンの夫と広告代理店勤務の妻という夫婦を演じていた。
そう、“あの男”とは三谷幸喜。中井と鈴木は三谷が脚本と監督を担当した映画『ザ・マジックアワー』と、WOWOWのオリジナルドラマ『三谷幸喜「short cut」』で共演しているのだ。
特に『三谷幸喜「short cut」』は結婚10年のすれ違い夫婦が妻の祖父の葬儀に出席した帰りに山道に入りこみ、過酷な状況の中で互いに感情をぶつけあうというシチュエーションが展開。これはどこか『共演NG』と重なる気もする。
中井貴一と聞いて多くの人がイメージするのが「とことん真面目」というキャラクターだろう。デビュー直後の代表作『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)仲手川良雄役から今まで、多くの作品で彼が演じてきたのは基本、スクエアな人物。たとえ役の上で不倫をしようが殺人を庇おうが根の部分には真面目さがあり、酷いクズや異常な面を抱えたキャラクターを演じる姿はあまり見た記憶がない。また、どちらかというとかき回す側でなく、翻弄される側の役どころが多いプレイヤーだ。
鈴木京香を表す言葉として的確なのは「美しく強い」に尽きる気がする。特に印象的だったのは『王様のレストラン』(フジテレビ系)の三条政子や『きらきらひかる』(フジテレビ系)の杉裕里子。また、いわゆる普通の主婦を演じた『夜行観覧車』(TBS系)や『だから荒野』(NHK BSプレミアム)でも彼女は強く凛としていた。『グランメゾン東京』(TBS系)で木村拓哉に負けないオーラを放っていたことや、アームチェア・ディテクティブ的に存在した『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)でのソリッドな演技も記憶に新しい。