横浜流星の見事な進化ぶりで胸がいっぱいに 『きみの瞳が問いかけている』の息をのむ美しさ

 『きみの瞳が問いかけている』 は美しい映画だ。まじりっけなしのラブストーリー。BTSが歌うエモーショナルな主題歌。そして、映像の美しさに思わず息をのむ。

 柔らかな陽の光は、手をかざすとその温度まで伝わってきそうなほど眩しく。鼻先をくすぐる潮風の香りが、海岸に並ぶ風力発電のプロペラから見て取れる。明香里(吉高由里子)は、その屈託のない性格がにじみ出るような透明感のある肌とつややかな髪が軽やかになびき、彼女が作る陶器の色も繊細に染まる。スクと名付けられたゴールデンレトリバーの毛の動きでさえ、キラキラとしていている。そんな美しい映画の中でも最も観客の心を掴んだのは、横浜流星という人の造形美ではないだろうか。

 目の不自由な明香里が、その姿かたちを指先で確かめたように、スクリーンには横浜の上向きなまつ毛、スッと通った鼻筋、シャープな顎のライン、口角がキュッと上がったくちびる……と、丁寧に映し出される。思わずその美青年っぷりにため息が出るのをグッと抑える。キックボクサーという役柄から、肉体もしっかりと仕上げてきた横浜。画面いっぱいに広がった背筋は、まるで彫刻のようだ。

 その美しさをより際立たせているのは、塁の背負っている影の部分だ。身寄りのない塁は、同じ修道院の養護施設で育った佐久間(町田啓太)が率いる半グレ集団の一員となっていた。塁のキックボクシングの才能を見抜いた佐久間は、用心棒かつ違法な地下格闘技の選手としてもファイトマネーを稼がせていた。

 そんな中である事件をきっかけにキックボクサーとしての将来を絶たれてしまった塁。償いを終えたとしても、罪の意識が消えないままの塁。まるで自らを罰するかのように生活は荒み、アルバイトを掛け持ちながらなんとか生きているという状態だった。目の奥は深い沼のように暗く淀み、仕事以外では誰とも話すことのない日々。そんなとき、塁に突拍子もなく話しかけたのが明香里だった。

 目の不自由な明香里は、そのくたびれきった雰囲気と管理されていない様々なニオイから、「おじさん?」と呼びかける。どんな顔をしているのかと聞かれて戸惑う塁に、きっとカッコよくないんだと予想する明香里。きっと多くの観客が、実際の塁を知ったらその美形っぷりに驚くに違いないと頬を緩めてしまうシーンだ。

 また明香里が、塁が来る前まで警備のおじさんと一緒に見ていたというドラマには、ピンク色の髪をした青年が出演する。このキャラクターに以前、横浜がドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で演じた“ゆりゆり”こと由利匡平のことを思い出してしまった。

 当時、演じていたのも少し斜に構えたところのある男子高校生。親に反抗しながらも、人生を自分で切り拓く青臭さもまた魅力的な役柄だった。みずみずしい高校生役から、社会の暗闇にもがき苦しむ24歳のキックボクサー役へ。見事な進化ぶりを感じることができた。

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