『35歳の少女』鈴木保奈美の“初めて”の微笑み カセットテープが物語のキーアイテムに

 柴咲コウが主演を務めるドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)が10月24日に第3話を迎えた。

 望美(柴咲コウ)が25年の眠りから目覚めた時、同時に母・多恵(鈴木保奈美)の人生も思わぬ方向に転がっていた。四半世紀、娘が目を覚ますのを信じ、時には仕事の愚痴を聞いてもらいながら、望美の身体を動かし続けていた多恵。「やったわ。諦めないでよかった。間違えてなかった」。望美が目覚めた瞬間、多恵は静かに喜びを噛み締めた。

 しかし、その先に待っていたのは止まっていた25年もの時間がもたらす身体と精神の不一致。さらに周囲からの偏見の目。初恋の相手・結人(坂口健太郎)の助言もあり、成長すると志した望美だったが、心配し過ぎる多恵の束縛がそれを邪魔していた。

 望美の部屋に監視カメラを付け、家には外から鍵をかけ、スマホのGPSで位置情報を確認。「普通の人間じゃないの。ママしか守れない」と娘に言い放つその一言は、過保護を超越した、諦めのようにも聞こえてくる。教師の経験のある結人は「なんでも分かってると言いながら子供の気持ちを知ろうとしない」「このままだと鳥の雛がずっと巣にいて飛べなくなる」と諭してみせるが、その言葉は多恵の心には届かない。結果、多恵に響いたのは愛する娘から突きつけられる「こんなの私が大好きだったママじゃない」という厳しい一言だった。

 第3話のクライマックスは、望美が多恵と抱き合う場面だ。望美が仲直りの方法として手紙に綴り伝えたのは、25年間大変な思いをしながら諦めなかった多恵への感謝と「抱きしめて『ありがとう』と言うこと。『よかったね』って言ってもらうこと」だった。手紙に書かれた文字が綺麗になっているのは、結人の教えのおかげでもある。そのことに気がつき、彼の存在を認め始めた多恵は週2回の結人との勉強の許しを出す。嬉しさから抱きつく望美に、戸惑いを覚えながらも多恵は望美をそっと抱きしめ返す。「よかったね、望美」とささやく多恵。

 印象的なのは、一切笑顔のなかった多恵がここで温かな微笑みを見せることだ。25年前の眩しい笑顔とはまだほど遠いものの、久しぶりの娘との抱擁に疲れ果てた心がゆっくり癒されていくのを感じさせる。多恵もまた一歩一歩娘とともに進んでいる、その心の機微が穏やかな笑みから読み取れる気がした。

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