浜辺美波が問いかける“正義” 『タリオ 復讐代行の2人』コメディ路線の裏にあった社会的テーマ

 浜辺美波演じる元弁護士の白沢真実×岡田将生扮する詐欺師・黒岩賢介がバディを組み、“復讐代行”を遂げる『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)。第3話の依頼人は小学生の女の子、依頼内容は父親を自殺に追いやったパワハラ会社への復讐だ。

 実態は、会社の不正に気づいた依頼者の父親が声を上げたにもかかわらずいじめられ、気力がなくなってしまっての自殺だった。本作内でキング牧師の名言「最大の悲劇は悪人の圧政や残忍さではなく、善人の沈黙だ」が引用される箇所があった。確かに2人がこれまで泣き寝入りせざるを得なかった依頼者に代わって復讐代行してきたのは、悪事をはたらきながら法の網をくぐって裁かれずに世の中にのうのうと蔓延っている悪人たちだ。悪事を働く張本人だけでなく、それを見て見ぬ振りする周囲の無関心、沈黙こそが悪事を許す土壌を作ってしまい、被害者を八方塞がりな気持ちにし、気力を奪い去り窮地に追いやってしまうのだ。

 今回の女の子同様、白沢は自身の父親・正弘(遠藤憲一)が詐欺の濡れ衣を着せられて失踪中だ。復讐代行を通して当時何もできなかった自身の非力さに対する無念さを少しずつ晴らしているのかもしれない。

 また、今話が秀逸だったのは、依頼人の女の子自身にも「悪いことをしている人を見てみぬ振りをしている人も悪人」という実体験があることだ。自分自身も学校でのいじめに対して気づいていない振りをしてしまったと後悔し、父親に嘘をついてしまったことを謝りたいのだと泣く。さらに、自身の父親にパワハラした社長が逮捕される報道シーンを見て「この人もいじめられているみたい」と悲しげにこぼす。

 「悪事」というのはほんの身近なところにすぐに転がっており、簡単に自分自身もそれに加担してしまいかねないことを示唆している。特に、今回の逮捕シーンに象徴されている通り、近年のSNSなどでの「誹謗中傷」「袋叩き」はその最たるものだろう。“正義”を振りかざして、“正しいとされること”から少しでも外れてしまった者に対して、公に「叩いても良い相手」が見つかったとばかりに寄ってたかって石を投げる。

 この小学生の依頼者のように、そんな場面に遭遇した際にも胸に残る違和感に鈍感になってしまわずに、また“そんなものだよ”と感覚が鈍って慣れ切ってしまわぬ自分自身でいたいものだ。

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