園子温が語る、コロナ禍での映画製作と作品に及ぼす影響 「人に優しい映画を撮りたい」

 オムニバス映画『緊急事態宣言』がAmazon Prime Videoにて配信中だ。新型コロナウイルス感染拡大防止を徹底した状況の中で撮影、制作された本作は、園子温、中野量太、非同期テック部(ムロツヨシ、真鍋大度、上田誠)、真利子哲也、三木聡の5組の監督たちが、「緊急事態」をテーマに、それぞれが全く異なるアプローチで撮り下ろしたオムニバス映画。“緊急事態”の記憶、あるいはそれがもたらした変化や意味を、「映画」として刻み込んだ。

 今回、リアルサウンド映画部では、本作において『孤独な19時』を手がけた園監督にインタビュー。主演を務めた斎藤工との関係性、コロナ禍の影響、今後の映画製作についてまで語ってもらった。

「回答が一個だけの時代じゃない」

ーー『緊急事態宣言』はコロナウイルスが大きなテーマになっています。園監督としてはコロナウイルスをどう捉えましたか?

園子温(以下、園):今回、『孤独な19時』では“コロナウイルスよりさらに凶暴なウイルス”が蔓延した世界が設定になっています。“凶暴化したコロナウイルス”だと少しリアリティが強すぎると思ったんです。物語に寓話性を持たせたかったんですよね。イソップ童話じゃないけど、「昔々あるところに〜」と始まるような。自分の声をダイレクトに張り上げるんじゃなくて、童話みたいな世界にしようとは最初から考えていました。

ーーあえて自分の意見を強く主張するのではないと。

園:これまでの僕は、原発の問題の際もオブラートに包まないで映画にしてきました。ただ、今回は少し対象との距離を置きたかった。この現実、そしてコロナウイルスという存在の姿や形が未だ分からないんですよ。今は、何もかも不透明すぎて、全体が掴めない不思議な状況だと思っていて。だから、その中でも確かなことだけを映画にしようと。

ーー園監督としては、その作り方の変化は題材によるものが大きい?

園:どうなんでしょう。「回答が一個だけの時代じゃない」とだんだん思えてきたんですよね。だから、最後に斎藤工が言うセリフも、これが正解だと思って書いているかというとそんなことはない。「こういう言い方もあるよ」と提示するようなイメージです。

ーー園監督から見る、斎藤さんの役者としての魅力は?

園:やっぱりストイックってことですね。そして何よりも映画が好きだということがすごく感じられる。当然といえば当然なのかもしれないですが、やはり今の日本の映画界ではそういう人はなかなかいなくなってきているので。これからも一緒に何かやりたいです。

ーー園監督は今回のコロナ禍をどのように受け止めていますか?

園:津波や原発と違って、世界中の人が等しく、この災難の被害に今も遭っているわけじゃないですか。『ヒミズ』や原発を扱った『希望の国』を撮ったときは、「よくわかりもせずに」みたいな言われ方もしていたんですが、今回のことに関しては、分かっているフリも何もなく、自分も平等にコロナウイルスというものの影響を受けている。その意味では、自分が感じている空気感を映画にすればいいという分かりやすさはありました。僕は、去年心筋梗塞を患って、お医者さんから「今コロナウイルスに罹ったら命やばいよ」って言われているんです。だから、気を付け方や捉え方も、普通より少し敏感かもしれません。

ーー着想から制作までどのぐらいの期間を要したんでしょうか?

園:すごく短くて、オファーを受けてから1カ月後にはほぼ完成している状態でしたね。今の気持ちを全て映画に乗せればよかったから。自粛している間のたくさんの記憶を、オブラートに包みながらまとめて書いたという感じですね。

ーーそのアイデアを38分という短編〜中編程度の時間に詰め込んでいます。

園:今回は分数が自由だったので、キツさはなかったですね。逆にもっと短編にしようと思っていたのが、台本が膨らんできて、中編になってしまったという(笑)。真利子くんの作品は1時間あるって後で聞いて、僕も1時間ぐらいやればよかったと思いました(笑)。

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