アニメ、リメイク版、実写ドラマに続き再びアニメ化　何度も甦る『妖怪人間ベム』の魅力

　さて、テレビアニメとしては3作目、単に『妖怪人間ベム』の映像作品としてなら4作目にあたる『BEM』（2019年）が、現代のアニメ界に再び甦った。イラストレーター、デザイナーとして活躍している村田蓮爾をキャラクター原案に迎え、従来の『妖怪人間ベム』で見慣れた主人公3人の外見を大きく変化させたことが話題となった。ベラの年齢設定は10代半ばの少女に引き下げられ、人間態ではアナベラという名で名門校の女学生として生活している。これまでの設定では実写ドラマ版も含め、人間への憧れがもっとも強いのは最年少のベロで、年上のベラはそれをたしなめる少々きつい性格であったが、『BEM』ではこの2人の立ち位置が逆転し、人間になりたいという感情が強いのはベラの方で、ベロは人間社会をドライに見ている厭世観の強いキャラとして登場した。

　寡黙な性格のベムは、若い女性刑事のソニア・サマーズを危機から救ったことが縁となって、度々ソニアと接触し、彼女が正義の心を持つ妖怪人間の存在に迫ってゆくドラマ部分を担っている。舞台は、貧困層の住む荒れたアウトサイドと、富裕層の高層ビルが立ち並ぶアッパーサイドに分かれた巨大な港町・リブラシティ。この街を裏から操る「見えざる議会」なる正体不明の組織と、人体改造実験で妖怪人間（ヴィラン）を作り出すマッド・サイエンティストがベムたちの敵となる。

　最終的にベムたちは、強敵の妖怪人間ベガと戦い、リブラシティの運河にまたがる橋を破壊するほどの大きな戦闘のあとに消息をくらました。2020年秋に公開される新作映画『劇場版BEM〜BECOME HUMAN〜』は、このテレビシリーズ『BEM』最終回を受けての物語である。

　1968年に産声をあげたテレビアニメ『妖怪人間ベム』は、再三のリメイクや実写化など半世紀以上もの歳月をかけて脈々と語り継がれ、2020年の秋は長編アニメとなってスクリーンに現れる。今年は実写映画『妖怪人間ベラ』も公開予定だ。

　時にオリジナルに忠実に、時に大掛かりなモデルチェンジで視聴者を驚かせ、何度も映像作品として甦る『ベム』の魅力とは何か？　それは、人間に裏切られ続けながら、なおも人間になりたいと願うベム、ベラ、ベロたちの、人間の善性に希望を抱こうとする悲壮なまでの姿に、多くのクリエイターたちの創作意欲がかきたてられるからではなかろうか。醜悪な姿でありながら善の心を持つ妖怪人間と、善も悪も両方併せ持つ不完全な生き物の人間が織りなすコントラスト。そこに『ベム』が何度も復活する鍵がある。完全新作のアニメ映画の中で、ベムたち妖怪人間はどのような生きざまを見つけ出すか。そして彼らを追い続ける人間の刑事ソニアはどう立ち向かうのか。『BEM』のテレビシリーズで脚本とシリーズ構成を担当した冨岡淳広が、映画でどのような物語を紡ぐのか。映画館で見届けたい。

■のざわよしのり
ライター／映像パッケージの解説書（ブックレット）執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■公開情報
『劇場版BEM～BECOME HUMAN～』
2020年秋全国ロードショー
監督：博史池畠
脚本：冨岡淳広
キャラクター原案：村田蓮爾
キャラクターデザイン：松本美乃
アニメーション制作：Production I.G
キャスト：小⻄克幸、M・A・O、小野賢章、宮田俊哉
配給：クロックワークス
製作：劇場版BEM製作委員会
(c)ADK EM／劇場版BEM製作委員会
公式サイト：https://newbem.jp/2020_mv/
公式Twitter：@newbem2019

『妖怪人間ベラ』
9月11日（金）池袋HUMAXシネマズ、渋谷HUMAXシネマほか全国順次ロードショー
出演：森崎ウィン、emma、堀田茜、吉田奏佑、吉田凜音、桜田ひより、清水尋也、六角精児
監督：英勉
脚本：保坂大輔
音楽：野崎美波
主題歌：BREAKERZ「BARABARA」（ZAIN RECORDS）
原作：ADKエモーションズ
制作プロダクション：ダブ
配給：DLE
(c)2020映画「妖怪人間ベラ」製作委員会
公式サイト：http://bela-movie.com/