『PART3』は“繰り返しネタ”に注目! 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』再地上波放送の意義

 第1作と第2作のマーティは、自分が歴史から消滅しないように両親を交際させようと奮闘したり、または自分がゴミ箱に捨てたスポーツ年鑑が原因で狂った歴史を元に戻すなど、いわば身に降りかかるトラブルを解決するためにタイムトラベルをしていたのだが、第3作だけは過去へ飛ばされてしまったドクを現代に連れ戻したいという、能動的な目的を持って西部開拓時代へ行っている。第1作から何度も強調されているが、ドクはマーティにとって、かけがえのない大事な友人なのだ。この親子ほど年齢が離れた2人の素晴らしい友情も、本シリーズの重要なパーツのひとつといえる。第1作では過激派グループに射殺されるドクを救うべく、マーティがあらゆる手段を模索したが、第3作ではクララとの愛に盲目になり、科学者のロジックを忘れそうになるドクをマーティが現実に引き戻したり、映画の最後にドクがマーティに贈る言葉などに2人の関係性がよく表れているだろう。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はシリーズ3作品を通じて、同じシチュエーションが毎回登場する、いわゆる“繰り返しネタ”があるのも特徴で、一例を挙げると気絶したマーティが目覚めると、そばに母ロレインがいること、ビフが背後から「マクフラーイ!」と怒鳴りながらマーティに近寄ってくる場面がある、そして馬糞を積んだジョーンズ肥料店の荷台にビフが突っ込んで肥料まみれになるなど、他にもまだあるのだが、前2作を観た人は“繰り返しネタ”をチェックしながら第3作を観ると楽しいかも知れない。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのヒットが世界にもたらした功績は色々あるが、最たるものはタイムマシンのベースカーとなった自動車デロリアンを世界的に有名にしたことだろう。車体のドアが羽根のように上に開くガルウィングドアの設計が独特な車は、ジョン・デロリアンという男性が設立したアメリカのモーター・カンパニーが製造した。映画が公開される頃には既にデロリアン社は倒産しており、世に出回っていたデロリアンの台数は限られていたが、本作のヒットによって新規オーナーが増えたり、または手放そうとしていた人が思い直して乗り続けたというエピソードがある。中には外見や内装を改造して、映画に登場するデロリアンをそのまま再現した実車を持つマニアもいるほどだ。

 ジョン・デロリアン自身は麻薬やコカインなど薬物がらみの事件で逮捕歴もある人物だったが、第1作が公開された当時、ロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルへの連名扱いで「勇気づけられたよ。夢を見せてくれてありがとう」という感謝の手紙が送られてきたという。ジョン・デロリアンは2005年に他界したが、彼の名車は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』の翌週にテレビ初放送される『レディ・プレイヤー1』(2018年)にも登場する。VR空間のゲーム世界で、主人公が運転する車として印象深い活躍を見せるので、興味のある人には視聴をお勧めしたい。

 30年以上にわたって映画ファンに愛されてきた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だが、意外にも『金曜ロードSHOW!』の放送で、第1作を初めて観たという視聴者が多かったという。これは『金曜ロードSHOW!』が、最新映画のプロモーション的な番組編成を長年続けたことで、懐かしの名作映画が放送される機会が少なかったことも関係しているだろう。

 日本テレビは2020年に『金曜ロードSHOW!』の公式サイトで、視聴者から「見たい映画リクエスト」を募り、その結果を反映させた『天使にラブソングを』(1992年)を5月に放送して好評を博した。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、その視聴者リクエスト企画の第2弾だったのだ。80年~90年代のヒット作が新鮮な感動として若年層に届くのであれば、地上波で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作を放送した意義が大いにあったと言えるだろう。他局の映画番組も含めて今後のラインナップに期待したいところだ。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』
日本テレビ系にて、6月26日(金)21:00〜22:54放送
監督・原案:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、メアリー・スティーンバージェン、 リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン
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