また、杉山は長台詞を有する難役を演じるにあたり「噛んだら最初から録り直す」という収録にも強かに向き合うストイックさを発揮。ほかのアフレコ現場であれば途中からということになるだろうが、ラジオという特性上、その一度の中で生まれる流れや勢いというものが大事になってくる。杉山のとてつもない役作りへの執着があの卓越した演技に繋がっていることが分かる。

　蛇足になってしまうが、杉山が専門学生のときに行ったラジオの生放送の後に外部の関係者から「面白いからもうひと枠出てほしい」と懇願されたというエピソードを聞いても、彼女以外にミナレ役の適任はいない、と感じてしまうのは筆者だけではないだろう（参考：TVアニメ『波よ聞いてくれ』リレーインタビュー第1回杉山里穂｜アニメイトタイムズ）。アニメと平行して公開されている杉山がパーソナリティーのラジオ『波よ聞いてくれ 〜Wave,Listen to me!〜』（エフエム北海道）においてもミナレ顔負けのトークを発揮しているのもうなずける。

　学生時代からラジオの才能を見せていた杉山が、巡り巡ってラジオパーソナリティーとして奮闘するミナレを演じる。これを運命と言わずして何というべきかといったところだが、何よりも声優としての力量を持ち合わせているからこそなせるわざだろう。『波よ聞いてくれ』は杉山にとって代表作となっていくことは間違いない。2020年は杉山の活躍に要注目だ。

■川崎龍也
音楽を中心に幅広く執筆しているフリーライター。YouTubeを観ることが日課です。Twitter：@ryuya_s04

■放送情報
『波よ聞いてくれ』
MBS、TBSにて、毎週金曜深夜2:25〜放送中
Amazon Prime Video、Netflixなどで配信中
声の出演：杉山里穂、藤真秀、石見舞菜香、山路和弘、大原さやかほか
監督：南川達馬
シリーズ構成：米村正二
キャラクターデザイン：横田拓己
アニメーション制作：サンライズ
(c)沙村広明・講談社／藻岩山ラジオ編成局
公式サイト：https://namiyo-anime.com/