『闇金ウシジマくん』は若手俳優の登竜門だった!? 窪田正孝、中村倫也、山田裕貴らが残した爪痕

 『闇金ウシジマくん』――この名を聞いたことが、一度はあるだろう。「10日で5割」という法外な利息を吹っ掛ける闇金業者と、債務者たちのハードな運命を描いた人気マンガだ。2010年には山田孝之主演で実写化され、TVドラマ、WEBドラマ、映画と6年もの間続くシリーズとなった。新型コロナウイルスの影響による自粛期間中、レンタルや配信サービスで本作を見返した方もいるのではないか。

 第1作から、10年。改めていま見返すと、映画・ドラマ界で活躍する若手人気俳優が、数多く本シリーズを通ってきていることに驚かされる。そこで今回は、「ウシジマ組」の豪華なメンバーを改めてご紹介。それぞれが演じた役柄とともに、振り返っていきたい。

 山田孝之、やべきょうすけ、崎本大海、綾野剛をメインキャストとする『闇金ウシジマくん』シリーズは、毎エピソード様々な事情を背負ったキャラクターが登場し、それぞれが闇金に手を出したことで破滅していく姿をシニカルに見つめる。出演者においては、極限状況におかれた人々が壊れていく姿を演じることで、表現力を見せつける絶好機でもある。

映画『闇金ウシジマくん』DVD

 まずは、2012年の映画『闇金ウシジマくん』。本作では林遣都と大島優子がメインの“被害者”を演じている。特に林のポジションは、冒頭からラストに至るまで物語をけん引する重要な役どころ。イベントサークルを主宰し、ビッグな男になろうとするが、ウシジマとかかわったことで転落していく。林は、自信過剰だった青年が焦燥感と絶望にのまれていく姿を、ひりつく演技で体現した。林にとっては、ドラマ&映画『荒川 アンダー ザ ブリッジ』(2011~2012年/TBS系)に続く山田との共演作だ。同年の『悪の教典』(2012年)ではゲイの高校生に扮し、こちらでもセンセーショナルなキャラクターに挑んでいる。

 2014年のdビデオスペシャル『闇金ウシジマくん』には、千葉雄大が出演。生意気で厭世的なタクシー運転手に扮し、「マジファックっすよね」「うっぜーよ!」と珍しい暴言セリフに挑んでいる。家と車のローン返済に苦しみ、闇金地獄に落とされる悲惨な役どころだ。本作に出演後、ドラマ『水球ヤンキース』(2014年/フジテレビ系)、映画『アオハライド』(2014年)などが放送・公開され、飛躍を遂げていく。ちなみに本作、「ロバート」の秋山竜次が主人公ポジションを務めており、強烈な変態的怪演を見せつけている。

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 続く2014年の映画『闇金ウシジマくん Part2』には、菅田将暉、窪田正孝、門脇麦、柳楽優弥らが出演。ウシジマのもとで働く不良少年に扮した菅田は、中尾明慶演じる半グレに襲われ、ビニール袋をかぶせられて呼吸困難になるという危険なシーンにも果敢に挑戦。債務者の母親を軽蔑しながらも見捨てられないなど、人間くさい「隙のある演技」が光る。『そこのみにて光輝く』(2014年)、本作、『海月姫』(2014年)とタイプの異なる作品に立て続けに出演した菅田は、その後日本映画界の旗手としてますます絶対的な存在に。

 ドラマ『最高の離婚』(2013年/フジテレビ系)で好青年を演じた窪田は、本作で指名をなかなかとれない新人ホスト役に。気のいい人物だったが、門脇演じるフリーターと知り合い、「No.1ホストになる」という夢に目がくらんだ結果、彼女に多額の借金を背負わせてしまう。まっすぐな夢追い人でありつつも、罪深い男を絶妙なバランスで成立させた。

 対する門脇は、『愛の渦』(2014年)の大胆なベッドシーンが話題を呼んだ後に、本作で堕ちていく女性を続けて演じ、実力派女優として覚醒。2015年にはNHK連続テレビ小説『まれ』にも参加し、お茶の間にも知られる存在となった。本作で門脇が演じたフリーターに執着し、ストーカー化する変質者を、柳楽が怪演。薄汚れた格好で徘徊し、目をギラつかせる異様で不気味な存在感は、柳楽の代表作『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)につながっていく。

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