『レンタルなんもしない人』は心の余白を示す コロナ禍に問い直される“何もしない”ということ

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって外出自粛が続き、先の見えない日々が続いている。毎週水曜深夜に放送される『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系)は、そんな今だからこそ見てほしい作品だ。

 『レンタルなんもしない人』のテーマは「何もしない」こと。原案は同名のTwitterアカウントで、主人公の「レンタルさん」こと森山翔太(増田貴久)が、依頼に応じて様々な場所に行くというストーリーだ。レンタル代は交通費のみで「なんもしない人(ぼく)を貸し出します。」「ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます。」というのが条件である。

 「何もできない」と言うだけあって、レンタルさんの何もしなさぶりは徹底している。その場にいるだけで、依頼者には不干渉(没交渉ではない)。多くの場合、一人では気が進まないシチュエーションや、誰かにいてほしいときに依頼することが多いようだ。これまでに、メロンフロートを飲む、焼肉を食べる、耳のにおいを嗅ぐ、東京最後の1日に付き合う、出社同行、一緒に誕生日を迎える、などがドラマで取り上げられた。

 ただそこにいるだけにもかかわらず、レンタルさんの問題解決能力は高い。第1話で契約を切られて故郷に帰る大宮亜希(志田未来)や、第3話でSNS疲れに悩む女子大生・島袋香奈(福原遥)は、レンタルさんと過ごすことで立ち直るきっかけを見つけていた。

 他人の空白を埋めてくれるレンタルさんだが、レンタルさん自身は空白ではない。第2話で仕事のプレッシャーから出社困難に陥った城戸隆志(岡山天音)に付き添った際には、会社員時代の記憶がフラッシュバックしてお腹が痛くなるし、前述の島袋が21歳になると知り、同じ年齢で先立った姉を思い出していた。「何もしない」ことの背景には、レンタルさん自身の人生がある。

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