銀行を中心に拡大する“池井戸潤ドラマユニバース” 『下町ロケット』白水銀行を起点に考える

 『下町ロケット 特別総集編』(TBS系)第2回が4月12日に放送される。2015年に放送された日曜劇場『下町ロケット』の原作は、作家・池井戸潤の同名小説。メガバンク出身の同氏の作品では、融資をめぐる銀行との交渉が見どころのひとつとなっている。

 『下町ロケット』の主な舞台となる佃製作所のメインバンクが白水銀行だ。蒲田支店融資課長の柳井(春風亭昇太)と支店長の根木(東国原英夫)は、佃航平(阿部寛)からの融資の依頼を断るが、後に佃製作所がナカシマ工業との特許侵害訴訟で高額の和解金を得ると態度を一変させる。最終的に佃製作所は、メインバンクを東京中央銀行に乗り換えることになる。

 資金の貸し倒れが生じないように財務状況をモニターする銀行は、企業のお目付け役とも言える存在。行員の出向は融資先の監視も兼ねている。佃製作所の経理部長・殿村直弘(立川談春)も出向者だ。最初は銀行のスパイとして、殿村に不信感を抱いていた社員たちだったが、誠実に社長を支える殿村を目にして次第に心を通わせるようになった。

 中小企業を舞台にした作品では、2013年に放送された『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)青島製作所のメインバンクも白水銀行である。峰竜太演じる西東京支店の磯部支店長は収支改善のため野球部の廃部を求め、会社存続と生き残りを賭けた野球部の挑戦がドラマの両軸になった。2014年放送の『株価暴落』(WOWOW)も主人公・板東洋史(織田裕二)は審査部所属の行員であり、白水銀行は池井戸作品の重要なピースを担っている。

 白水銀行のライバルが東京中央銀行である。『陸王』(TBS系)最終話で、こはぜ屋の新たなメインバンクとなった東京中央銀行は、国内最大手のメガバンクであり、池井戸の出身銀行を想起させる。

 この東京中央銀行を舞台にしたドラマが『半沢直樹』(TBS系)だ。同行の前身、産業中央銀行と東京第一銀行は2002年に合併。いわゆる「バブル組」と呼ばれる半沢直樹(堺雅人)と渡真利忍(及川光博)、近藤直弼(滝藤賢一)たちは、1989年に旧・産業中央銀行に入行した同期である。

 近日放送予定の『半沢直樹』第2シーズンの原作は『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』。後者は、銀行内の派閥対立を描いた作品である。頭取の中野渡謙(北大路欣也)は東京第一銀行出身で、かつて半沢の父を自殺に追い込んだ元常務で取締役の大和田暁(香川照之)は産業中央銀行出身。新シーズンでは2人の関係性にも注目したい。

 主人公の半沢は、前シーズンでは大阪西支店の融資課長から東京本部の営業第二部次長に昇進したが、最終話で中野渡から出向を命じられた。これは実質的な左遷にあたる。新シーズンでは、東京セントラル証券の営業企画部長として企業買収に挑む。

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