『アドリフト 41日間の漂流』は実話系サバイバル映画の秀作! 海という巨大な存在への恐怖と美しさ

 主人公たちは漂流生活が進むにつれて、栄養を失って痩せこけ、皮膚もボロボロになってゆく。一方、海は違う。嵐のシーンを除けば、この映画に出てくる海はずっと美しいままだ。90年代を知っている人にしか伝わらないたとえだが、JAL OKINAWAやポカリスエットのCMみたいな、綺麗で爽やかな風景がずっと続くのをイメージしてほしい(もちろん飛行機やポカリの支給がない)。どこまでも美しい風景をバックに、人間が追い詰められていく姿を描く。これが想像以上に怖い。ことさらに悲劇性を強調せず、淡々としたタッチも効果的だ。自然の中での人間のちっぽけさと、それでも決して諦めずに懸命にあがく姿が、より強烈な印象を残す。

 海は広いな大きいな、だからこそ怖い……本作は『ゼロ・グラビティ』(2013年)以降のファイト一発サバイバルものだが、徹底したリアル志向によって、こうした海の恐怖を思う存分に味わわせてくれる。何気ない一言から繋がるクライマックスの展開も、あまりにもデカく、美しく、非日常的な舞台である「海」だから実現したと言っていいだろう。観終わったあとに危険を承知で海へ繰り出す人々に畏敬の念を覚えるか、「やっぱり我が家が1番」と思うか、そこは人それぞれだとして、ともかく海の恐怖と魅力を楽しめる1本なのは間違いないだろう。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿し
ています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『アドリフト 41日間の漂流』
4月10日(金)新宿バルト9ほか全国公開
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:シャイリーン・ウッドリー、サム・クラフリン
配給:キノフィルムズ/木下グループ
2018年/イギリス・アメリカ/英語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/96分/字幕翻訳:チオキ真理/原題:Adrift
(c)2018 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://adrift-movie.jp
公式Twitter:@AdriftMovieJP

関連記事