『恋つづ』と『テセウスの船』が示した今後のドラマ界トレンド 不安な世の中を忘れさせる清涼剤に

時代に求められた『恋つづ』と『テセウスの船』

『テセウスの船』(c)TBS

 冬クールドラマは医療ドラマや刑事ドラマのシリーズモノばかりで民放のプライムタイム(19~23時)のドラマに関しては新味が感じられる作品が少なかった。

 もちろん医療ドラマの中にも『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)や『心の傷を癒すということ』(NHK総合)のような意欲作もあったのだが、新型コロナウイルスをめぐる状況が世界中で刻一刻と変化しており、いつ日本でも医療崩壊のようなことが起きてもおかしくないという渦中にいると、あまり積極的に観たいとは思えなかった。

 それは連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)終盤でヒロインの息子が慢性骨髄性白血病に侵されるという場面にしても同様で、フィクションの中で病院が描かれると、どうしてもコロナのことを連想してしまう。

 そんな中『恋はつづくよどこまでも』(TBS系、以下『恋つづ』)は例外的に安心して最後まで楽しめた医療ドラマだったが、本作は医療モノというよりは病院を舞台にしたラブコメだったから多くの人に受け入れられたのだろう。魔王と呼ばれるドS医師・天童浬(佐藤健)と勇者と呼ばれる看護師の佐倉七瀬(上白石萌音)の、今どきこんなのありかと思うようなベタベタの甘い展開の連続で、観ていてついついニンマリとしてしまう。不安な世の中を忘れさせてくれる、一服の清涼剤として楽しめた。

 一方、『テセウスの船』(TBS系)は、昨年ヒットした『あなたの番です』(日本テレビ系)の「考察ブーム」をうまく取り込むことで話題となった。原作漫画の結末を変えて真犯人を用意したことが最大の勝因だ。『恋つづ』も『テセウスの船』もダークホース的な作品だったが、こういう時代に求められるものは明るいラブコメと、考察を刺激するパズル的なミステリードラマなのだという今後のトレンドを指し示したと言えよう。

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