伊藤健太郎、『スカーレット』は紛れもない代表作に 光る“真面目さ”で主役街道へ

 俳優・伊藤健太郎がまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。映画では『のぼる小寺さん』『とんかつDJアゲ太郎』『今日から俺は!!劇場版』『弱虫ペダル』などの公開作を控え、TVドラマでも『ピーナッツバターサンドウィッチ』(MBS)、『東京ラブストーリー』(FOD/AmazonPrimeVideo)の放送がまもなく始まり、現在、連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)では主人公の喜美子(戸田恵梨香)の息子である武志役を好演し、作品のファンを魅了している。キー局のテレビや、全国ロードショーの映画だけではなく、配信ドラマやCM、舞台など活躍の場も広い伊藤は、どんな仕事も実直にこなす“真面目さ”が光る。

『スカーレット』第133話(写真提供=NHK)

 伊藤は『アシガール』(NHK総合)で若君と呼ばれるヒロインの相手役で注目を集め、その後『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で本格的にブレイク。以降は、『必殺仕事人2019』(テレビ朝日系)、映画『惡の華』(2019年)、そして『スカーレット』での武志役を射止めた。武志は主人公夫婦を結ぶ大切な役でありながら、後半の『スカーレット』を引っ張る影の立役者でもある。

 伊藤が演じる武志は、子供らしいピュアな愛らしさと、父親である八郎(松下洸平)を彷彿とさせる寡黙で穏やかな姿で、まさに“川原家の一人息子”を体現した。喜美子を「お母ちゃん」と呼び、とりわけ反抗的でもなく、かつ飾り気のない姿で当たり前の日々を淡々と過ごす様子は、非常にリアルな息子像でもあるだろう。

『スカーレット』第141話(写真提供=NHK)

 “息子”という存在は、しばしば素直でなく描かれることが多い。幼なじみの竜也(福崎那由他)などのように、母を困らせることで関心を引く姿は母子を描く上でよくある構図だろう。しかし、武志はそうした反抗的な姿は見せない。それどころか、喜美子に対する感謝や愛情表現は素直で、決してマザコンには見えないが、良好な母子関係を築いていることを示している。この絶妙に人懐こい息子像を演じるのは、実は簡単なことではないだろう。武志という役は、分かりやすい衝突がないまま、喜美子と八郎に復縁してほしいと願い、陶芸の道で陶芸家の両親を持つプレッシャーなど、計り知れない感情を抱いている。さらにこうした想いを言葉にしない姿は、まさに父である八郎とよく似た、見守り型の愛であることを感じさせる。父親の姿を踏襲し、“武志”であることを意識させる子の在り方を演じる中で、伊藤は静かな中にも含みのある芝居を魅せた。

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