『スカーレット』が描き続けた日常の積み重ね 大切なのは“かけがえのない時間”をどう生きていくか

 いよいよNHKの連続テレビ小説『スカーレット』が、今週で最終回を迎える。今まで、ドラマの中ではさまざまなことがあったが、その中で喜美子(戸田恵梨香)を中心とした登場人物には、残ったものと、残らなかったものがあると気づく。

 例えば、若かりし頃には、喜美子と八郎(松下洸平)との間に淡い恋心の感情があったが、それが実を結び、結婚して同じ陶芸家として切磋琢磨する間に、ふたりは離婚をして婚姻関係というものは残らなかった。しかし、息子の武志(伊藤健太郎)も大きくなり、喜美子と八郎が再会し、「新しい関係」を築いたふたりの間には、甘くはないが、それに代わる感情が生まれ、強い絆で結ばれているのがわかる。

 喜美子と八郎の間でなくなったのは、それだけではない。結婚してしばらくするころまでは、八郎が喜美子を教える師のような関係性で、夫であり男であるからには、女である彼女よりも上でありたいという感情もあったのではないかと思われるし、そんなセリフもあった。しかし、彼が信楽を去ったことで、そんな関係性は解消され、次に出会ってからは、どちらが陶芸をする上での師であるということではなくなった。もちろん、そこには八郎が陶芸をやめたことも関係しているのだが。

マスコットガール“ミッコー”として売り出された喜美子

 喜美子は絵付師であったときから、職人としては見られず、女性だからというだけでマスコット的な存在としてみられてきた。それは、陶芸家になってからも、八郎を支える役回りを求められ続けていたが、いまや一人前の陶芸家と認められるようになった。陶芸家となった今では、喜美子自身も女だからとか男だからという目線を向けられることもなくなってきて、彼女は陶芸教室を行い、誰かにその楽しみを教えることをライフワークのひとつとして大切にしているのがわかる。

 また、喜美子には高校時代から続く腐れ縁の友人がいる。ひとりは照子(大島優子)で、もうひとりは信作(林遣都)だ。照子は、早くに結婚して子供もたくさんおり、「丸熊陶業」の跡取り娘として夫の敏春(本田大輔)とともに奔走している。喜美子と照子は、なんでも言い合える間柄で、ときには立ち入ってはいけないような領域にもお互いに口を出し、激しくぶつかるし、お互いの生き方の方向性も同じではないが、それでもその友情が壊れることはない。

 信作には、公平な目線があり、若い頃から喜美子が「女性だから」と言って、一歩控えた立場であるよう信楽の人々から求められていることを知ると、必ず憤りをあらわにしていた。彼が喜美子の妹・百合子(福田麻由子)と結婚してからも、喜美子との関係はもちろん変わらない。今でも、信楽の役所で働く後輩が陶芸家である喜美子に対しての尊敬の念が足りないとわかると、「敬え!」と一括するような人物で、一貫してその公平な目線は変わらない。

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