塩野瑛久、『貴族降臨』『プリレジェ』をつなぐ重要な存在に 奏×誠一郎のいちいち切ないシーン

 今回、奏が演奏したのも、やはりビリー・ジョエルの名曲の「Honesty」であった。「誠実」を意味する歌詞と、メロディのメロウさがあいまってせつない。誰もが誠実でないからこそ、誠実を求めている。「誠」という文字が重なっているからよりそう思えるのか、それは、あたかも、自分の元を去っていった誠一郎のことを歌っているようで、その奏の歌に誠一郎の姿が映し出されると思わずギュっとなってしまいそうだった。

 「『貴族降臨』はその荒唐無稽な世界観を笑いながら楽しく観るものなのに!」と思いつつも、その後も、誠一郎が奏とドリーがフェンシングで戦っているところにしろ、誠一郎がなぜドリーに出会ったのかなど、彼のシーンはいちいちせつない。

 そして最終的に誠一郎が奏の元を去るときのやりとり、表情にもドラマがありすぎて、やはりその演技を観ているだけでもやっぱり涙が出そうになった。同時に、そんな誠一郎を演じた塩野瑛久がどんな作品でも、確実に爪痕を残そうと全力で演じているのも伝わってきた。

 『貴族降臨』は、いつものように、また何かが始まる余韻を残して終わっていった。次回があるのだとすれば、誠一郎や奏や第二側近であった鏑木元(飯島寛騎)との関係性も、何か新しいものが見られたらと思えるし、また彼らとは別のキャラクターを演じる俳優が、新たに爪痕を残すところも観てみたいと思われた。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』
全国東宝系にて公開中
出演:白濱亜嵐、片寄涼太、鈴木伸之、佐野玲於、関口メンディー、川村壱馬、吉野北人、藤原樹、長谷川慎、町田啓太、清原翔、廣瀬智紀、荒牧慶彦、飯島寛騎、塩野瑛久、中島健、勝矢、加藤諒、袴田吉彦、山本耕史、DAIGO
監督:河合勇人
脚本:松田裕子
配給:東宝
(c)2020「PRINCE OF LEGEND」製作委員会
公式サイト:http://prince-of-legend.jp/

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