『テセウスの船』“家族の愛”は取り戻せるのか? 竹内涼真と鈴木亮平をつなぐメロディ

 もし家族が殺人事件の加害者だったら? 考えるだけでも恐ろしい問いだが、もしそれが冤罪だったら、私たちは加害者とどのように向き合えばよいのだろうか?  1月19日からスタートした日曜劇場『テセウスの船』(TBS系)は、その疑問に父と子の絆を通して答えてみせる。

 『テセウスの船』の舞台は現代、そして31年前である。田村心(竹内涼真)の一家は、平成元年に起きた音臼小無差別殺人事件の加害者家族として世間の目を避けるように生きてきた。容疑者である父・佐野文吾(鈴木亮平)は死刑判決を受けて服役中。塀の中から無罪を主張するたび、家族にはバッシングが浴びせられてきた。

 父とのかかわりを絶ってきた心は、自身も父親となり、亡き妻・由紀(上野樹里)の「真実から逃げないで」という言葉に背中を押されて、過去と向き合うことを決意。真実を求めて事件が起きた音臼村へ向かう。事件現場の小学校跡地で31年前にタイムスリップした心の前に若き日の佐野が現れる。

 ものごころついた頃には「父はいない」と言われて育ってきた心は、若き父親の姿を初めて目にして、胸に去来するものがあったに違いない。家族を苦しみのどん底に落とした張本人を前に、愛憎が入り混じった複雑な感情が表情に表れていた。由紀の残したノートによると、音臼小の事件の前に、村では不可解な事件が連続して起きていた。ちょうどその日が、三島医院の次女・千夏が農薬のパラコートを誤飲して死亡した日であることに気づいた心は、事件を未然に防ぐために動きだす。

 「テセウスの船」というタイトルの語源はギリシャのパラドックス(逆説)である。英雄テセウスが乗った船を後世に残すため、古くなった部品を取り換えるうちに、もともとあった部品がなくなってしまう。では、今ある船は以前と同じものだろうか、という問いだ。本作では、過去に戻って事件を解決するタイムリープものの定番設定が用いられており、過去を変えることで現在を変えるという発想は、テセウスの船のパラドックスにも通じる。だが、それだけで終わらず、一歩踏み込んだ家族の物語が丹念に描かれているのが特徴だ。

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