中川大志、俳優面でも“細杉くん”力を発揮!? 『G線上のあなたと私』で見せるリアルな変化

 いくえみ綾の同名コミックをドラマ化した、波瑠主演の『G線上のあなたと私』(TBS系)が、しみじみと刺さる。

 物語の中心となるのは、「大人のバイオリン教室」で出会った3人――寿退社間近で婚約破棄された也映子(波瑠)と、大学生・理人(中川大志)、主婦の幸恵(松下由樹)だ。本作では、世代も境遇も異なる3人を中心に、恋や友情、「人間愛」が紡がれていく。

 ストーリー的には決して派手さがない中、軸となるのはまさに3人の会話・やりとりである。そこで、作品全体に安定感を与えているのが、也映子と理人の二人をちょっと離れた場所から見守り、ときには羨んだり、応援したりする松下由樹の包容力だ。言ってみれば、物語のバランサーでもある。

 さらに、淡々と紡がれていく3人の日常の中で、微妙な心の変化や、距離感の変化を描くキーパーソンは、中川大志だ。

『G線上のあなたと私』第1話 (c)TBS

 最も若いだけに、変化が大きい時期ということもある。しかし、彼が担っているのは、「自身の変化」「3人の距離の変化」「2人の距離の変化」「時の流れ」を浮き彫りにする役割ではないだろうか。

 元・兄の婚約者で、自身が長年片思いし続けているバイオリン教室の講師・眞於(桜井ユキ)に会いたいためだけでバイオリンを始めた理人。当初は、当然ながらアラサーOLの也映子とも、主婦の幸恵とも住んでいる世界が全く違うだけに、二人に対して何の興味も持っていない。バイオリンを始めた理由について詮索してきたり、“ウザがらみ”をしてきたりする二人に、苛立ちを見せていたほどだ。しかし、それが、3人で共に練習をし、それぞれが抱える悩みを知る中で、少しずつ変わっていく。

 と言っても、二人に対してにこやかになったり、優しくなったりするわけではない。むしろ逆で、無遠慮な物言いや、乱暴な態度が出てくる「変化」に、理人の二人に対する心の壁が少しずつ崩れていることが感じられる。

『G線上のあなたと私』第4話 (c)TBS

 この「無意識に心が無防備になっていってしまう」変化を表現するのが、中川大志は実に巧い。さらに、也映子と幸恵との3人の関係においても、違いがある。ドラマ内で幸恵がそれを感じ、指摘していたように、理人と也映子の距離はどんどん近くなっていく。特にそれを感じさせるのは、理人の態度の違いだが、本人はそれに気づいていない。

 理人は、他人のことだと、いつでも理路整然と、身も蓋もないほど直球で「正論」を投げるくせに、自身の恋に関しては急に臆病になり、結論の出ない堂々巡りを繰り返す繊細さ、意気地の無さを持っている。そうした理屈っぽさや合理性、青臭さと、繊細さが同居している若者特有の「面倒くささ」を、実にリアルに表現している。

『G線上のあなたと私』第7話 (c)TBS

 さらに、大きな変化を見せたのが、第7話(11月26日放送分)。大学の臨床実習で忙しい理人や、娘の中学受験を控える幸恵、再就職が決まる也映子と、3人にそれぞれに変化が訪れる。そうした過程も穏やかに静かに描かれているため、つい忘れそうになるが、時の流れを意識させられるのは、理人が実習を通して少し大人びた表情になっていたこと。

 そして、也映子を見つめる眼に、以前とは明らかに異なる優しさ・あたたかさが感じられるようになったことだ。言葉で言わなくとも、目の表情の変化に、恋心が見てとれる。それぞれの生活で忙しかった間に、育っていった感情が、何より如実に表れているのだ。

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