『G線上のあなたと私』しがらみに囚われていた桜井ユキ 人はいつから“大人“になるのか
「今、溺れて息ができなくなってるのは眞於先生だよ。助けてあげてほしい」
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)第7話では、安穏として見えた日常に、少しずつ訪れていた変化が一気に表面化する。也映子(波瑠)の無職生活は終わりを迎え、慣れない仕事に奔走。理人(中川大志)は大学での実習が始まり、幸恵(松下由樹)は姑の介護に加えて娘の受験が重なる。徐々に、そして着実にバイオリンから遠ざかる3人。
しかし、遠のくほどにバイオリンを通じて出会った3人の想いは強くなる。“ない“を意識するほど、“あった“ときが恋しくなる。鳴らない玄関のチャイム、オーダーしそこねた唐揚げ……理人と也映子はお互いへの想いに気づき始め、不器用な2人を温かく見守る幸恵。そんな中、3人の先生である眞於(桜井ユキ)は手の病気によって、バイオリン教室から姿を消すのだった。
第7話のサブタイトルは「大人になるとき」。人はいつから“大人“になるのだろうか。きっと、そのラインなんてものはないのではないか。幸恵の娘・多実(矢崎由紗)が反抗期を迎えたように、子どもだと思っていても、周囲を気遣うこともある。
私たちは大人になったり、子どもに戻ったりを繰り返して生きているのかもしれない。「3コン延期しようか」と提案した大人の也映子も、「3人でバイオリンやろうよ」と泣きじゃくっていた子どもな也映子も共存している。
人生には、浮き沈みがある。誰かが沈んでいたら、自分が大人になって手を差し伸べる。自分が沈みかけたときには、「助けて」と子どものように大人の誰かに叫ばないと、溺れてしまう。人は、きっとそうやって救ったり、救われたりしながら、人生をなんとか泳ぎ抜いているのだ。
だが、“普通“の人は、大人と呼ばれる年齢になると、つい子どもな自分を見せられないと身構える。よく言えば平気そうに見える、悪く言えば気にかけなくていい人に思われがちだ。一方で手を差し伸べれば違う意味が生まれたり、「ほっとかれたくない」と叫べば「こじらせてる」と囁かれ、現代の大人は何かと自分の思いを発信しにくい。
だからこそ、弱っている自分を素直に受け止めてくれる人、「苦しい」「息ができない」と涙ながらに訴えられる相手がどれほど貴重な存在か。このドラマを見ていると、改めて人生に必要なものを認識させられる。