渡辺大知の出演作が止まらない! 経験を力に変える瞬発力が役者としての信頼を生む?

 映画『わたしは光をにぎっている』で、再開発で消える街を撮影する緒方銀次を演じているのは渡辺大知だ。1990年8月8日生まれの渡辺は高校在学中に結成したロックバンド、黒猫チェルシーのボーカルとしてメジャーデビューすると(2018年10月に活動休止)、近年は俳優としての活躍もめざましく、2019年だけでもドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK総合)や『Iターン』(テレビ東京系)、『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)をはじめ、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)第39回での森繁久彌役など話題作へのキャスティングが続いている。なぜ渡辺はこれほどまでに同業者から信頼を寄せられるのだろうか?

『わたしは光をにぎっている』(c)2019 WIT STUDIO/Tokyo New Cinema

 「男子三日会わざれば刮目して見よ」という故事がある。目を離している隙に「いつの間に?」と思うほど見違えてしまうのが男子の成長曲線だが、俳優としての渡辺もこの類型に当てはまる。

 みうらじゅんの自伝的小説が原作の『色即ぜねれいしょん』(2009年)。俳優デビュー作となったこの作品で渡辺はいきなり第33回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「スクールカーストの最下層で青春のエネルギーを持て余す文系男子」という主人公・純のイメージは当時10代だった渡辺と二重写しになって見えた。スクリーンに「普通の男子」というアイデンティティを刻んだ渡辺は、同作以降、その人懐っこい笑顔と気どらないオーラで学生やサラリーマン、バンドマンなどを演じキャリアを重ねてきた。

 身近にいそうな存在感という渡辺のポテンシャルはパートナーを得たときに最大化する。渡辺を語るときに外すことのできない映画『勝手にふるえてろ』(2017年)では、松岡茉優演じるヨシカの本命彼氏「イチ」に対する当て馬「ニ」を熱演。ヨシカに振り回される「ニ」の虐げられっぷりが、ブレーキなしで走り抜けるラストシーンのインパクトを倍増させていた。また2018年のドラマ『恋のツキ』(テレビ東京系)では、高校生との浮気に走る主人公ワコ(徳永えり)のモラハラ気味な彼氏として同棲カップルのリアルな生々しい日常を画面に焼き付けた。

『勝手にふるえてろ』(c)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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