『わたしは光をにぎっている』舞台挨拶で松本穂香にサプライズ! 監督からの手紙は「優しい素敵な言葉」
映画『わたしは光をにぎっている』公開記念舞台挨拶が、11月16日東京・新宿武蔵野館で行われ、主演の松本穂香、渡辺大知、徳永えり、中川龍太郎監督が登壇。本作の見どころや撮影時のエピソードを語り合った。
映画の舞台になった銭湯にちなんで風呂桶を手にキャストたちが入場すると、集まったファンが拍手で迎えた。主人公の宮川澪を演じた松本は、出来上がった作品を観て思わず泣いてしまったという。「こんなに客観的に自分が出ている映画を見れたのは初めてで、純粋に好きな映画で楽しくあったかい気持ちになった」とその時の様子を語った。中川監督も「ちょうど1年前につくった作品ですが、泣いている姿を見たとき『つくってよかった』と思った」と語り、公開を喜びあった。
本作で脚本・監督を務める中川監督は、前作『四月の永い夢』がモスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞などを受賞し、フランスの映画誌『カイエ・デュ・シネマ』も絶賛する若き逸材。都市開発で変わる街を取り上げたのは、「生まれ育った川崎市の登戸にひさびさに行ってみたら街が様変わりしていた」と製作のきっかけを述べ、「小さい頃の思い出ごとなくなってしまったような悲しい気持ちがした。自分だけでなく、日本中どこでも起きている問題だと思い、映画にしなければならないと思った」と語った。
消えゆく街の風景を映像に収める緒方銀次を演じた渡辺大知は、「自分は神戸市出身だけど、学生時代にバンドでたむろしていたライブハウスが去年なくなり、思い出がたくさん詰まった場所で、そこに集まっていたおっちゃんたちはどこに行ってしまうんだろうと思った」と話す。渡辺の言葉を受けて、中川監督は舞台を銭湯にした理由を「ライブハウスのようにまったくの他者と偶発的に出会う空間。自分も銭湯が好きで、一番風呂に入るとおじいちゃんとかが必ず話しかけてくれる。まったく知らない人と言葉を交わすのが人間の幸福度や日々の豊かさにつながっていると思う」とロケーションの意図を説明した。
銭湯の常連客・島村美琴を演じた徳永えりは、撮影で大変だったシーンをたずねられて「スッポンを食べる前のシーン」と回答。ワンカットで何度も撮り直したシーンを振り返りながら、「ふつうは監督がカットをかけて、『すごく良かったよ』と言ってくださったりするんですけど、あまりに良い撮り方ができたのか、カットをかける前に監督が『最高だったよ!』とカメラの前に出てきてしまって。こんなことは初めて」と暴露。思わぬ徳永の発言に、中川監督も「セリフがぎりぎり終わっていなくて、あの後、助監督に怒られたんです」と反省するなど、映画愛あふれるエピソードを明かしていた。