佐藤健×鈴木亮平×松岡茉優×白石和彌監督『ひとよ』座談会 撮影現場の裏側から仕事に対する姿勢まで
鈴木「絶対的な信頼感が主演の健にあった」
ーー実際に現場に入ってみて、それまでの白石監督のイメージと違ったことはありましたか?
松岡:めっちゃ優しかったです。
鈴木:平和でしたね。
ーーもっと厳しいイメージがあった?
松岡:はい。しごかれるつもりで行ったんですけど、気づけばマーベルの話しかしていなかったです(笑)。
鈴木:スタッフも役者も「おらぁ! いくぞ!」みたいな感じなのかと思っていたら、全然平和でしたね。
白石:パワハラとか禁止にしてるんで(笑)。
佐藤:僕も演技のことをもっと言われるのかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて。現場と作品でかなりギャップのある組だと思います。
白石:そうなのかなぁ。僕自身のスタンスは変わらず、常に緊張感を持ってやっているつもりではあるんですけどね。演出に関しても、これだけの俳優が揃っていますから、それは安心してお任せできる。もちろん変なところがあれば言いますよ。
鈴木:僕らが与えられた環境で好きにやってみたのを監督に見てもらって、それを監督が調整してくれて、1番いいように撮ってくれる。そういうイメージでしたね。
松岡:だからたまに言われるとドキッとするんですよ。「あっ、そりゃそうだ! ごめんなさい」という気持ちになるんです。自分の詰めの甘さに気づくというか……。
佐藤:あれっ、そんな感じだったっけ?(笑)
松岡:いや、ほんとに!(笑)。私自身はいつもベラベラ喋っておりましたけども、言われた時には「うわ!」ってなっていましたよ。
ーー具体的にはどういう……?
松岡:しっかり覚えているのはクランクインの日。緊張していたのもあるし、どういう感じで行くのかなと探っていたのもあって、大きな声で喋ってたんですよ。そしたら監督から「園子!」って結構大きな声で言われて、それで静かにしようと思いました。
一同:(笑)。
佐藤:ただ私語を注意されただけじゃん(笑)。
鈴木:現場での言い方の問題だよね(笑)。
松岡:「園子!」の言い方が初日の私には怖かったんです。「あ、ごめんなさい!」って感じでした(笑)。
白石:いや、全然覚えてないわ(笑)。
一同:(笑)。
ーー佐藤さんは白石監督とのやり取りで印象に残っていることはありますか?
佐藤:それこそもっと細かく芝居をつけられるのかなって思っていたんですけど、それがなくて驚いたというのが一番ですね。でも、随所随所ですごくセンスのいいセリフを付け足してくれたりするんですよ。そこがリアリティに繋がっていったような気がします。
ーー今回は現場で役を作っていく部分が多かったそうですね。
佐藤:そうですね。今回の作品は特にそういう部分が強かったです。まず、自分が何かしないといけないという気負いがありませんでした。それは脚本が面白いというのもあるし、このキャストと白石組ということで、自分は存在だけしていれば、それでいいなと思えました。それだけでいい映画になるなという確信が持てたのは大きかったですね。
ーー鈴木さんと佐藤さんは、2015年に放送された『天皇の料理番』(TBS系)に続いて2度目の兄弟役です。
佐藤:『天皇の料理番』での共演があったから、かなり初期の段階から抵抗感なく兄弟という関係性を築けたと思います。
鈴木:これだけ体のサイズも違うので、初めてだったら「本当に兄弟に見えるのか」と結構気になったかもしれませんが、もう既に1回やっていたので、自然に役に入れました。それと、前の現場での絶対的な信頼感が主演の健にあったので、それも大きかったですね。茉優ちゃんもすごくセンスを持っている役者なので、いきなり3人でやったところから、ふわっと呼吸が合って、一体感が生まれたような気がします。
松岡:ちゃんと血縁者に見えないといけないので、私はそこに気をつけました。いい年の男女ですから、作品が違えば夫婦や恋人に見える可能性もある分、2人の前では特に、“女性”を捨てるというか……。
鈴木:気をつけてたんだ。
松岡:気をつけていました。2人の前では、父や親戚と話すような感覚でいましたね。だから、ずっと距離が近くても「近い」と思われないようにするにはどうしたらいいのかを考えていました。
鈴木:たしかに全然色気を感じなかった。
松岡:いや、それはそれで困る!(笑)。