また会う日まで、荒木荘のみんな 『スカーレット』喜美子がちや子に遺した「お茶漬の味」

 川原家の抱える借金の総額を知り、そのあまりのツケの数、大きさに、笑うことしかできなかった喜美子(戸田恵梨香)。成長期にある妹の直子(桜庭ななみ)、百合子(住田萌乃)たちのことを思うと、とても胸が痛む。

 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第34話では、喜美子が苦渋の決断の末、大好きな荒木荘の人々に、故郷である信楽に戻ることを告げた。

 「ただいま戻りました〜」と荒木荘に元気よく戻ってきた喜美子だが、やはり妹たちの泣き顔、母の弱々しい姿が浮かんでくるのだろう。どこか空元気な様子である。喜美子は信楽から大阪までの電車の中で、今後どうするか、一生懸命に考えたようだ。そこで出た答えが、荒木荘を出て、信楽に戻るということである。そんな喜美子の話に、荒木荘の主人・さだ(羽野晶紀)、雄太郎(木本武宏)、大久保さん(三林京子)の三人は、耳を傾け、寄り添ってくれる。

 楽しい日も辛い日も、たくさん過ごしてきた喜美子。厳しかった大久保さんは「お母さんに何もなくて良かった」と喜美子を温かく包み込み、雄太郎は涙ながらに自作の歌を贈る(ワケの分からぬ歌ではあるが……)。喜美子はとても恵まれた環境にいたのだと、ここで改めて気付かされた。

 ところで、ここにいない荒木荘の住人が一人。それはもちろん、喜美子ともたくさんの話をした、ちや子(水野美紀)だ。新聞社に務める彼女は、信頼していた上司であるヒラさん(辻本茂雄)がよその新聞社に移ったことに激しく胸を痛め、大いに荒れていたところなのだ。そして喜美子は、会えぬならせめて手紙だけでもと、ちや子に向けて一筆したためる。そこにはこんなことが書いてあった。

 喜美子の目の前には二つの道があること。一つは、いまの生活を続けながら、つまり荒木荘で働きながら、実家に仕送りをし、念願であった絵の学校に週に三日通うこと。これはとてもワクワクする。そしてもう一つは、信楽に戻って、家計を支えること。荒木荘でたくましく成長した喜美子のことだ。信楽でも何かしら仕事は見つかるだろうが、そこは故郷でありながらも未知の世界。非常に勇気がいる。喜美子はこの二つのうち後者を選んだのである。憧れていた絵の世界、そして、荒木荘での生活を諦めて。

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