『ジェミニマン』は映画史の分岐点に? 90年代から難航し続けたプロジェクトを実現させた最新技術

ポテンシャルを最大限発揮できる環境での視聴を

 本作は2Dで見るか、3Dで見るかで評価が大きく分かれるでしょう。私は、絶対に3D+ in HFR(ハイ・フレーム・レート)で上映できる映画館で見るべきだと思います。ストリーミングまで待ったり2Dで見ると、ガッカリする可能性が高いです。では、3Dだとそれなりに楽しいのか? そこはハッキリとYesとは言えません。しかし、この作品はプラス料金を支払ってでも3Dで、しかもin HFR上映で見るべきです。その理由を書いていきたいと思います。 

 まず、『ジェミニマン』は間違いなく、今ある映画の中で最先端です。一般的な映画が1秒間に24フレームで撮影されている一方で、『ジェミニマン』の3D+は毎秒60フレームで今までの2.5倍。これで何が実現したのかというと、情報量が増え、今まで以上に見えまくってしまうようになりました。どれくらい見えるのかというと、毛穴までバッチリなレベルです。肌荒れや質感を化粧でごまかすことができなくなったため、俳優人は薄化粧での演技となり、撮影が始まる前までに徹底的なスキンケアを求められたほど。ウィル・スミスは、ひたすら水を飲んで、肌のコンディションを整えたと話していました。 

 問題は毛穴だけではありません。昨今のアクション映画は、やたらとブラーと素早いカット割と効果音を組み合わせて、なんだかすごいことが起こっているようなごまかし演出が一般的になっていますが、常に挑戦的で革新的なアン・リー監督は、このアクションシーンも全て見せることにしたのです。アクションのすべてを見せることが、ごまかし系アクション映画と雲泥の差を産むのは、『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』のトムの演技を見れば一目瞭然。今回はその「アクション全部見せ」を3Dカメラで、しかもハイ・フレーム・レートでやってのけたのです。 

3D + in ハイ・フレーム・レートで生まれる没入感

  これまでの3D映画は、スクリーンは平面に見えていて、3Dのシーンになると画面からオブジェクトが飛び出てくるようになっていました。しかし、『ジェミニマン』の場合、俳優は常に飛び出ていて、背景に奥行きがあるように見えるのです。おそらく、両壁を含めた3方面に映像が映し出されるScreenXの存在を耳にした時に、多くの人が考えるであろう「没入感」を体験できるのが、本作『ジェミニマン』です。(実際のScreenXは両壁が明るくなってしまって没入感どころか映画に集中できないことがあります)。映画の中で起こっていることを、間近で「目撃する」感覚を味わうことができるのです。 

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