『俺の話は長い』などのショートドラマなぜ増加? 娯楽の多様化とネット配信で放送形態に変化

 土曜夜10時から放送されている『俺の話は長い』(日本テレビ系)は、無職でニートの31歳の青年・岸辺満(生田斗真)を主人公にしたドラマ。物語は、マイホームを建て替えるために岸辺家に、姉の秋葉綾子(小池栄子)が、夫の光司(安田顕)と娘の春海(清原果耶)とともに引っ越してくるところから始まる。本作は練られた会話劇を中心とした一種のホームドラマなのだが、ユニークなのはその放送形態、なんと一回の放送で2話放送されるのだ。

 つまり一時間の放送枠の中で24分のドラマが二本放送されるのだが『俺の話は長い』の他にも、近年はテレビドラマの放送形態において、ユニークな取り組みが増えている。

 同じ日本テレビ系で言うと、2クール(半年)に渡って放送されたミステリードラマ『あなたの番です』や、朝の情報番組『ZIP!』内で一話7分の帯ドラマ(月~金)を放送したバカリズム脚本のホームドラマ『生田家の朝』。

 テレビ朝日系では、一話20分の昼の帯ドラマ(月~金)を4クール(一年)に渡って放送している『やすらぎの刻~道』が、その筆頭に上げられる。

 背景にあるのは、今まで定石とされてきた1時間1話1クール(9~11話)という放送形態が時代と合わなくなってきていることと、毎日(月~土)1話15分2クール(半年)放送されているNHKの連続テレビ小説(以下、朝ドラ)の一人勝ち状態、そしてYouTubeやTikTokに代表される投稿動画サイトの盛り上がりがあるのではないかと思う。

 朝ドラや大河ドラマといった特殊な枠を除くと、この30年近い間、テレビドラマの基本的な放送形態は一話一時間×1クールというものだった。

 しかし、時代を遡れば、テレビドラマの放送形態はもっと多様だった。2クール(半年)以上放送されたドラマも多く、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)のように、14年近く毎週放送されていたドラマもある。おそらく、当時のドラマはバラエティに近く、人気があれば延々と続くことが当たり前だったのではないかと思う。

 それが一話一時間×1クールに落ち着いたのは、80年代に入りトレンディドラマがヒットして以降だろう。1クールという放送形態は春夏秋冬で分けられるので、恋愛ドラマであれば夏休みやクリスマスといった、そのシーズン毎にイベントを設定していけば物語を作ることができた。それは日本の高度消費社会化が進み、若者のライフスタイルがクリスマスやバレンタインデーといった恋愛ビジネスに組み込まれていく過程と確実にシンクロしていた。

 しかし現在は人々のライフスタイルも娯楽も多様化し、テレビも数ある映像コンテンツの一つとなっている。その結果、起きていることは可処分時間の奪い合いであり、視聴者が自分の都合で見たい時に見るということが当たり前のこととなってきている。

 そのため映像の消費形態は、すきま時間で少しずつ視聴するか、NetflixやHuluのようなサブスクリプションサービスで全話一気見をするかという視聴スタイルの二極化が進んでおり、決まった時間にテレビの前に座って見ることを強要するテレビドラマのあり方は年々厳しくなっている。

 すでにテレビドラマの多くはTVer等で見逃し配信がおこなわれており、FODやParaviといった自社のドラマを配信しているサブスクも多数存在する。おそらく長期的にはドラマのほとんどはネット配信され、サブスクに回収されていくのではないかと思う。それが15から20分弱のショートドラマが増えている背景だ。

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