『なつぞら』中川大志、『まんぷく』長谷川博己、『半分、青い。』中村倫也ら“朝ドラ相手役”が飛躍
『半分、青い。』佐藤健、中村倫也
そして、第98作の『半分、青い。』(2018年4月~9月)に関しては朝ドラとして異色で、厳しい意見がSNSなどに多く発信されることもある作品だった。挫折を繰り返すヒロイン鈴愛(永野芽郁)が突飛な言動で周囲を振り回すのに対して、同じ日に生まれた運命の相手である萩尾律(佐藤健)は繊細で思慮深い。幼なじみの鈴愛がマグマ大使の笛で呼べば来てくれるヒーローのような存在だ。
多くの朝ドラは、ヒロインの成長の物語。困難を乗り越えるたびに強さと賢さを手に入れる過程を視聴者が思わず共感し応援したくなるものなのだが、鈴愛には歴代のヒロインとは異なる“タフさ”があった。鈴愛が異なる挑戦をするたびに、行く先々に存在する相手役がこの作品の見どころとなっていた。
律の大学時代の友人で女子ウケ抜群の朝井正人を演じた中村倫也、鈴愛と結婚したクリエイターの森山涼次役の間宮祥太朗も本作をきっかけにさらなる飛躍を遂げた。
中村倫也は、今期で最も注目されるドラマ『凪のお暇』(TBS系)の安良城ゴン役で出演。『半分、青い。』で演じた正人にも通じる魔性の魅力を振りまいているが、2018年に「第5回Yahoo! 検索大賞俳優部門」に選ばれたことからも分かるように、ブレイクのきっかけは朝ドラといっても過言ではない。
また、間宮祥太朗はどこか憎めない、愛されキャラの森山涼次の印象を強く残し、ドラマやCMに引っ張りだこ。現在放送中のドラマ『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)では主人公の上妻圭右を演じている。
『まんぷく』長谷川博己
第99作『まんぷく』のヒロインの相手役、長谷川博己の活躍は言わずもがな。ヒロインの福子(安藤サクラ)とともに、インスタントラーメンの開発に情熱を注いだ発明家・立花萬平を演じきった。
そして、2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』では主演を務める。“ひょうきん”とも言えた萬平さんから、織田信長を討つこととなる明智光秀へと大きくイメージチェンジとなるだけに、どう演じきるのか今から楽しみで仕方がない。
『なつぞら』吉沢亮、中川大志
そして、残りあと4週となった第100作目の『なつぞら』。第23週の放送のタイトル「なつよ、天陽くんにさよならを」とあるように、いよいよ山田天陽役の吉沢亮のクライマックスシーンが第134話で放送された。天陽はヒロインであるなつ(広瀬すず)の目標の人であり、アニメーターになるという夢を誰よりも応援し、静かに優しく見守ってくれた運命の人でもある。
社会の価値観に左右されることなく、自分の言葉を語り、自分の描きたい絵を描いて、農業に真剣に取り組む天陽を魅力的に演じた吉沢亮。第134話で描かれた天陽の最期は、朝ドラ史に残る神々しささえ感じさせる名シーンであった。
また、『なつぞら』でヒロインなつと結婚した坂場一久を演じた中川大志も回を重ねるごとに女性からの支持率が急上昇。不器用で信念を曲げない頑固なイッキュウさんが、不器用ながらも家事や育児に奮闘し、ヒロインを真剣に支える姿こそ、現代女性が求める理想の夫像といえるのかもしれない。
2019年に公開になった映画『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』で「第42回日本アカデミー賞 新人俳優賞」を受賞した中川大志。不器用なキャラクターを器用に演じ、丁寧な表現で人物の成長を伺わせるところにも強い意志を感じさせる。役柄としても俳優としても、その成長を見守りたくなるという不思議な力が朝ドラ作品には宿っているようだ。『なつぞら』には、その不思議な力が強く渦巻いているように感じられる。
■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。
■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/