大泉洋、満を持しての日曜劇場主演 『ノーサイド・ゲーム』“サラリーマン役”は新境地となるか

 大泉洋が日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)に主演する。そう聞いて、サラリーマンの群像劇に出演するという意外性に驚いた人もいれば、「やっと日曜劇場に出演か」と思った人もいるのではないだろうか。

 近年の大泉出演の現代劇を見ても、確かにサラリーマン役は少なく、売れないマジシャン(映画『青天の霹靂』)、売れない落語家(映画『トワイライト ささらさや』)、売れない漫画家(映画『アイアムアヒーロー』)と「売れない」自由業という役どころが非常に多かった。こう書くと「売れない」三部作みたいに見えてくるが、もちろんそれは偶然。

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(c)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

 そのほかでも、探偵(映画『探偵はBARにいる』シリーズ)や、ファミレスの店長(『恋は雨上がりのように』)や、制度を問う筋ジストロフィー患者(映画『こんな夜更けにバナナかよ』)、パン、ワイン、チーズの製造者(北海道企画映画三部作)、大工職人(TBS系ドラマ『あにいもうと』)、農業に関するNPO法人の代表(HTBドラマ『チャンネルはそのまま!』)など、サラリーマン役はまったくと言っていいほど見られない。

 それは、団塊ジュニアが自由や夢を求めて生きろというメッセージを受け、また就職氷河期も経験し、正規雇用ではなく自由業に就き、結果「売れない」という状況にありついたという実態を、同じく団塊ジュニアの大泉が役で引き受けてきたという側面があるのかもしれない。もちろん、あくまでも想像に基づくものと、役を見ての結果論ではあるが。

 ただ、昨今のCM(「リクナビNEXT」や「ドラガリアロスト」「三井住友海上火災保険」など)ではスーツ姿の上司役、先輩役で登場することも多い。そこでは、先輩や上司になっても、偉ぶったりせず、どこか頼りない部分も残したままだからこそ、隣にいるような現在のリアルなサラリーマン像を短い時間の中でも感じさせた。

 また連続ドラマW『プラチナタウン』(WOWOW)ではエリートサラリーマンから町長になる人物を演じていたり、10年以上前を振り返れば、『ハケンの品格』(日本テレビ系)では、サラリーマンのど真ん中を演じていたこともあり、久しぶりとはいえ、サラリーマンの大泉洋を自然と受け止める人もいるだろう。

 映像化を予定した完全なあてがきで執筆され、大手出版社の雑誌編集長が主人公で、スーツ姿に茶封筒を抱える大泉の写真が表紙となっている小説『騙し絵の牙』(著:塩田武士)も映画化が決定している。こちらも、『ノーサイド・ゲーム』のように雑誌の廃刊をめぐって組織に翻弄される展開もある。大泉はスーツの立ち姿が良いとファンの間では定評がある。今後はスーツ姿のサラリーマンという役も多くなっていくのかもしれない。

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