『偽装不倫』東村アキコ節を期待! 不倫を偽るという逆張り設定は現代の恋愛事情をどう捉えるか
7月10日スタートの新水曜ドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)。原作は、東村アキコの同名漫画だ。
主人公は4年ぶりの連続ドラマ出演となる杏が演じる鐘子。32歳・独身・彼氏なしの派遣社員、二世帯住宅の実家で両親と姉夫婦と同居するパラサイトシングルだ。3年に及ぶ婚活に疲弊し、ちょうど勤務先の派遣契約が満了した日に婚活を辞めることを決意し、おひとり様旅行に発つ。
原作ではこの時の旅行先が韓国だが、ドラマでは福岡の設定だ(既に韓国でも映像化の話が進んでいるというから驚きだ)。その機内で運命的な出会いが待ち受けている。突然落ちてきたスーツケースが鐘子の頭を直撃し、そのはずみで指輪が落ちる。それは既婚者である姉・葉子(仲間由紀恵)の結婚指輪で、姉から借りたワンピースのポケットに入っているのをちょうど確認しているところだった。慌てる鐘子に指輪を差し出したのは、落ちてきた荷物の持ち主である年下のイケメン男子・伴野丈(宮沢氷魚)。あまりの美男子ぶりに動揺した鐘子は咄嗟に自分の結婚指輪だと答えてしまい、ここから既婚者だという嘘が始まる。
原作ではこの美少年はジョバンヒという韓国人男性だが、ドラマでは海外暮らしが長かった日本人男性という設定を注目の新人俳優・宮沢氷魚が演じる。原作通りスラリとした長身に、柔らかさとミステリアスさを兼ね備えた雰囲気が見事に体現されている。
この作品の面白いところは、独身なのに既婚者の振りをしてしまう、という通常あまり考えられないような逆張りの設定にある。それこそタイトル通り“不倫を偽ってしまう”のだ。
だが、不意に嘘をついてしまって、その後もなかなか本当のことを切り出せない鐘子の心情は、アラサー女性はもちろん、誰かに恋い焦がれたことのある人ならば心当たりのあるものだと気づかされる。
自分よりも若い美男子を前に、「既婚者の振りをしたのに食事に誘われたってことは、本当にお詫びのためだけ」と自分に言い聞かせ、落ち着いて誘いにも応じられる。偽りの設定のおかげで変に期待したり舞い上がったりしないように自分の心にセーブをかけられる。
原作でもジョバンヒから「僕と不倫しませんか?」とオファーを受ける鐘子。現状仕事も決まっていない、何にもない自分が「人妻」という顔を得た途端、人妻との火遊びに興味がある若い男の子の暇つぶしの相手にたまたま選ばれたのだと理解し、少し傷つきながらもその恋に手を伸ばすシーンが描かれている。
ここでも「若いイケメンに本気になっている訳ではない」「相手だって遊びなんだし、自分もそれに乗っかっただけ」と、大義名分を並び立てて、自分の本心にどんどん蓋をしていく。