綾瀬はるか、杉咲花、黒島結菜、菅原小春らが躍動 『いだてん』に登場した女性たちの魅力

 富江は、テニスに魅せられ、自分で西洋風のテニスウェアをミシンで作り、そのことで新聞などにも報道される人気者となる。あるとき、遠征で岡山のテニス大会に招かれたときに出会うこととなるのが、後の日本人女性初のオリンピック選手の人見絹枝(菅原小春)である。登場から「男のように身体が大きい」という声がコートに聞こえていて、その強さは群を抜いていたが、絹枝本人は、身体が大きいことにコンプレックスを持ち、ただ負けたくないということでスポーツをやってきていたのだった。

 自分も陸上を志していた、シマ先生(杉咲花)は彼女の才能を見出し、四三に陸上に向いているのではないかと推薦する。四三は「足ば見たら、君が陸上向きかどがんかわかる」と袴の上からさわろうとするのだが、そのときに咄嗟に四三を蹴り上げる。そのシーンが、急にスローモーションになり、高くまっすぐあがった足が、投げられた槍のように鋭く美しかった。

 シマは彼女の才能を高く評価し、その後も絹枝に手紙を書くのだが、シマ自身は関東大震災により行方不明となってしまう。しかし、シマのオリンピックに出たいという思い、四三と出会ったことで、スポーツの楽しさを知ったその思いは、絹枝に伝わった。

 シマからもらった手紙に勇気づけられた絹枝は、岡山の競技会の走り幅跳びで日本新記録を出したそのお礼にと、四三が開いた復興運動会に現れたのだ。このときの絹枝に、かつては「男のようだ」と言われ、しぶしぶスポーツをやっていたときのような自信のない表情はなく、自分と自分の能力を肯定しているのがわかった。

 『いだてん』の第一部は、四三の妻のスヤ(綾瀬はるか)も含めて、女性の物語も描かれていたし、最後の一カ月は、シマから絹枝への「継承」の物語でもあったとも言えるだろう。継承というと、肉親への継承の話も多いが、『いだてん』では、シマの残した子供の息子が、古今亭志ん生(森山未來/ビートたけし)の弟子の五りん(神木隆之介)だったという意味での継承と、絹枝への継承のふたつの意味で描かれていた。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか/ 森山未來、神木隆之介/大竹しのぶ、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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