青春ゾンビミュージカル誕生の背景は? 『アナと世界の終わり』監督が語る、キャラクターの重要性

「エドガー・ライト監督の作品はもちろん大好き」

ーークリスマスという舞台設定もポイントになっています。このアイデアはどこから生まれたのでしょう?

マクフェール:かなり初期の段階では、夏が舞台になっていたんだけど、ライアンと共同脚本家のアランがクリスマスに変えたんだ。クリスマスは1年の中でも楽しい素敵な時期で、軽やかさ、楽しさ、明るさで溢れている。しかも、家族や友人が集まったり、みんながひとつになるイベントでもあるから、この映画が持つテーマ、メッセージ、キャラクターとうまく合致した。この映画を通して伝えたいことのひとつに、ファミリーの一員であるというのはどういうことか、家族とはどういうものか、ひとつにまとまることはどういうことかがあったからね。

ーーゾンビとミュージカルという組み合わせも斬新ですが、本作にはコメディや青春映画などいろいろな要素が詰まっています。何か参考にした作品やアイデアの基になった作品があれば教えてください。

マクフェール:エドガー・ライト監督の『ショーン・オブ・ザ・デッド』はもちろんのこと、彼が手がけたテレビシリーズ『スペースド』の大ファンだったんだ。エドガー・ライト監督の作品はもちろん大好きだし、『ショーン・オブ・ザ・デッド』はロマンティックなゾンビのコメディものだから、当然インスピレーションとしてはあったね。イギリスのテレビシリーズで、『The Inbetweeners』という高校生たちの物語があるんだけど、それもインスピレーションのひとつだよ。ジョン・ヒューズ監督の『ブレックファスト・クラブ』も大きかったね。あと、制作するにあたって「『ハイスクール・ミュージカル』を観ておけば?」って言われたんだけど、10分しかもたなかった(笑)。『glee/グリー』も同様で、ファーストシーズンすら観られなかったね。あとはやっぱりゾンビもの。『死霊のはらわた』をはじめ、ホラーとコメディの要素があるものは参考にしたし、大好きな三池崇史監督の『カタクリ家の幸福』を見直したりもしたよ。それらの作品へのオマージュがあちこちで込められてもいるんだ。ニックが戦いながら踊って5人で前進するシーンは、『ウエスト・サイド・ストーリー』のオマージュだよ。この作品を撮ることが決まってから初めて観たんだけど、すごく気に入ったから入れたんだ。

ーー三池崇史監督を好きなのは意外でした。

マクフェール:一番好きな作品は『殺し屋1』かな。若い頃に観たからかもしれないけどね。木村拓哉主演の『無限の住人』も好きだよ。あとは『オーディション』だね。あの作品は今思い出しても震えてしまうよ。

ーーミュージカルシーンで何か意識したことはありましたか?

マクフェール:それは楽曲によるかな。「Hollywood Ending」の場合は、全員参加型の『ハイスクール・ミュージカル』式で、カラフルで大きな動きの振り付けがある、エネルギー溢れる大掛かりなものでないといけなかったし、それぞれが孤立して自分が求めているものについて歌う「Human Voice」は、逆に曲がドラマチックだからこそ動きが必要なく、顔や身体でどんなことが表現できるかを意識したよ。どの曲もそれぞれキャラクターありきで、そのキャラクターがどんな心境なのか、物語のどこにいるかによって、振り付けや表現を決めていったんだ。『ウエスト・サイド・ストーリー』へのオマージュも、彼らが目的を持って前進しているからこそ、映画に取り入れることができた。やっぱりこの作品は、何と言ってもキャラクターに注目してほしいね。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『アナと世界の終わり』
5月31日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督:ジョン・マクフェール
脚本:アラン・マクドナルド、ライアン・マクヘンリー
音楽:ロディ・ハート、トミー・ライリー
出演:エラ・ハント、マルコム・カミングス、サラ・スワイヤー、クリストファー・レボー、ベン・ウィギンスほか
配給:ポニーキャニオン
2017年/イギリス/カラー/デジタル/英語/98分/シネマスコープ/原題:Anna and the Apocalypse/PG12
(c)2017 ANNA AND THE APOCALYPSE LTD.
公式サイト:http://anaseka-movie.jp/

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