A.B.C-Z 橋本良亮、舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』で見せた“健康的な”狂気の演技

 そんな名優が揃う中でも、橋本ははっきりと存在感を示していたと思う。オーケストラが見えている時の嬉々とした表情は、ある種の狂気を感じることができた。特に、登場後すぐのオーケストラが見えているシーン。照明の関係も相まって目が“ギラギラ”と光っていたのが印象的だ。一方で、スポットライトが当たっていない時は階段に座り、じっと空を見つめている。

 この静と動の差が、よりアレクサンドル・イワノフという人間を危うい存在に見せていたのではないだろうか。筆者は、舞台『コインロッカー・ベイビーズ』で橋本が演じた精神錯乱したハシ役が非常に好きだった(参考:A.B.C-Z 橋本良亮の演技力に目を奪われる 音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』で見せた可能性)。その狂いっぷりが再び観られるかもしれないと期待して行ったのだが、良い意味で裏切られたように思う。『コインロッカー・ベイビーズ』のハシとは違い、今回の橋本の見た目はとても健康的。肌艶もよく、笑顔がよく似合っていた。だからこそ、単にゲッソリと病んでいるよりも恐ろしい。活き活きと狂っているイワノフの無邪気さが、より一層ゾクッとする狂気につながっているのである。

 同作は、橋本が着実に俳優として成長していることが分かる舞台であったことに間違いない。次はどんな演技を見せてくれるのか、期待が高まる。『良い子はみんなご褒美がもらえる』の公演数は残すところ関西公演のみとなっているが、まだ観劇していない方はぜひ橋本の健全な狂いっぷりを楽しみつつ、舞台内容についても考えてみて欲しい。

(文=高橋梓)

■公演情報
『良い子はみんなご褒美がもらえる』
<大阪公演>
フェスティバルホールにて5月11日(土)〜5月12日(日)
作:トム・ストッパード
作曲:アンドレ・プレヴィン
演出:ウィル・タケット
指揮:ヤニック・パジェ
出演:堤真一、橋本良亮、小手伸也、シム・ウンギョン、外山誠二、斉藤由貴、川合ロン、鈴木奈菜、田中美甫、中西彩加、中林舞、松尾望、宮河愛一郎
特設サイト:http://www.parco-play.com/web/play/egbdf2019/

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