『わた定』を見て「働き方改革」について考える 向井理と中丸雄一、正反対の男性が描かれる意図

 今、急激に推し進められている「働き方改革」に疑問を感じてしまうのは、「ノー残業デー」を定めたり、勤怠状況を徹底管理するなど、画一的な施策を一律に走らせてしまっているケースが散見されるからだ。これではかつての「モーレツ社員」「社畜」時代と、意識構造上は極端な話変わらないのではないだろうか。本来、ライフステージの変化や目指すライフスタイルによって、働き方や勤務時間はもっと自由であっていいはずで、多種多様性を認めることこそが真の「働き方改革」につながるのだと思う。

 結衣のように、人それぞれの仕事に対する取り組み方を認め、それを尊重する姿勢こそがこの時代を生き抜く企業人にまさに求められていることなのではないだろうか。

 何となく惰性で、受け身で仕事をしているその他大勢よりも、結衣は誰よりも自発的に自分の人生に向き合い、妥協せずにコミットしているとも言える。ともすれば「さぼっている」「仕事に対してやる気がないのか」とも言われかねない「定時上がり」を、その仕事ぶりで誰にも迷惑をかけず、文句も言われずに実現できている結衣。それは結衣自身の中に“人生において大切にしたい優先事項”がしっかりと見えているからだろう。

 第2話では、結衣は彼氏の諏訪巧(中丸雄一)からプロポーズを受ける。彼の両親に挨拶に行こうとしていた矢先、休日にも関わらず結衣の元に種田からトラブル対応依頼の連絡が入る。

 それは奇しくも、仕事を優先して両家顔合わせの場に現れなかった2年前の種田を彷彿させるようなシチュエーション。2年前は「待たされる」側だった結衣だが、諏訪を「待たせる」側にもなり得るこの緊急事態をどのように乗り切るのか。

 当然ながらパートナー選びや恋愛にも互いの「働き方」が影響を及ぼす。ただ、その上で重要なのは条件や肩書きとしての「収入やキャリア」というよりもむしろ「人生において何を優先したいか」という価値観の擦り合わせであることを、結衣の恋愛の変遷が教えてくれているかのようだ。

 正反対の働き方・ライフスタイルを選択している種田と諏訪。それがために、結衣に「してあげられること・してあげられないこと」はそれぞれ異なってくるであろう。その二項対立を彼ら自身はどう捉え、どう囚われ、歯がゆく感じているのか。

 今後明かされていくのであろう、一見したところ水と油のような種田と結衣がなぜ婚約に至ったのかという経緯や、また諏訪が種田に対して抱いているであろう複雑な心の内にも注目していきたいところだ。

■楳田佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで2018年の劇場鑑賞映画本数は96本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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