「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『キングダム』『愛がなんだ』

愛がなんだ

 直木賞作家・角田光代の同名小説を、『パンとバスと2度目のハツコイ』の今泉力哉監督が映画化した恋愛映画。主人公の28歳のOL・テルコは一目ぼれしたマモルに想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモルがいてくれるならテルコはこの上なく幸せだと思っている。テルコと最も近しい友人である葉子、葉子に想いを寄せるナカハラ、マモルが憧れる年上の女性すみれ、ぞれぞれの「好き」の形が描かれる。

 こちら側からは一方的な片想いに見えるテルコだが、本人からすれば、ここぞという時に自分に助けを求めてくるマモちゃんは、自分に好意があるのでは? と思ってしまう気持ちもちょっとだけ分かる。本作には、理解できない/できるのテルコの気持ちと行動が散りばめられていた。

 テルコが葉子やナカハラにマモちゃんのことを話すパートでは、その会話の中で見えてくる、それぞれの恋愛観の違いが面白い。特にテルコとナカハラの「ストーカー同盟の反省会」。劇中で片想いをしている同士の2人が、腹を割って話す機会が2回あるのだが、ナカハラはいつも最後に「幸せになりたいっすねぇ」と呟く。ナカハラは「好き」の先に「幸せ」を口に出して求めている、だがテルコは「うるせぇバーカ」とそれを認めようとはしない。

 相手に想ってもらうことも、一緒になることも、幸せになることも、望めるのならテルコだってそうしたいはずだ。だけどテルコは「マモちゃんが好き」という気持ちを最も大切にしている。「好き」という感情があったとしても、それは恋や愛、恋愛と言えるのだろうか? かと言って好きになってくれる人を好きになるなんて、そんな順当そうな人生もなぁ、とやっぱりテルコのように自分の気持ちを貫いていくことへの憧れと、こうなってしまったら怖いなという気持ちが溢れてしまうのだ。

 『ここは退屈迎えに来て』では結婚する役柄を演じ合った岸井ゆきのと成田凌、『まんぷく』では良き夫と結ばれ夫婦生活を送る姉妹として共演していた岸井と深川麻衣、共演経験が豊富な役者たちの、相手と呼応した絶妙な演技が、片思いの恋の物語を優しく映し出している。

■公開情報
『愛がなんだ』
全国公開中
原作:角田光代『愛がなんだ』(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ
配給:エレファントハウス
(c)2019 映画「愛がなんだ」製作委員会
公式サイト:http://aigananda.com/

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