『キンプリ』は日本の映画界に広がる“応援上映”の先駆者的存在? 観客を巻き込むための様々な工夫
『KING OF PRISM』シリーズの最新作である『KING OF PRISM-Shiny Seven Stars-』が3月2日より全4章で順次公開されている。
もともとテレビアニメ化もされたアーケードゲームである『プリティーリズム』の公式スピンオフ作品であったが、女性向けのアイドルアニメとして単体でも大人気となり『キンプリ』の愛称でも知られ、劇場作品も2作品公開されている。
今作を語る上で外すことのできないのが“応援上映”の存在である。2018年で最大のヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』の人気を盛り上げる要因にもなり、現在の映画文化を語る上では絶対に欠かすことのできない上映形態であるが、これを認知させ、定着させたのは本作の大きな功績と言えるだろう。”応援上映”そのものが注目を集め出した当時は、テレビなどの各メディアでも奇異な視線を向けられたが、今では特に音楽映画では応援上映がつきものという状況になってきたようにも感じる。
しかし、この応援上映という形態は映画館に向いている一方で、作品を選ぶ一面もある。『ボヘミアン・ラプソディ』は応援上映がうまくハマった作品だ。映画内の楽曲はすでに日本でもよく知られたQUEENの既存の楽曲であるため、知名度も高い上に予習がすぐにできる。またQUEENは「We Will Rock You」のように手拍子、足拍子だけで観客をのせる楽曲もあり、一体感を演出することに非常に長けたバンドでもあった。
最も盛り上がる『LIVE AID』のシーンは当時のQUEENの演奏風景を完璧に再現しており、観客は映画の中の観衆としてフレディ・マーキュリーが煽るように合いの手や歓声をあげれば、たちまち劇場内がライブ会場となり一体化し、独特の高揚感を得ることができる。
一方で応援上映に向いているとは言いづらい作品もある。同じ2018年を代表する大ヒット音楽映画でも『グレイテスト・ショーマン』はあまりみんなで一緒に歌うには適しているとは言いづらかった。これは当然のことであるが、基本的に『グレイテスト・ショーマン』をはじめとする多くの映画は応援上映のために作られていない。手拍子や掛け声などで参加することはできるが、観客の存在はもともと考慮されていないために、観客を巻き込むような楽曲は決して多いとは言えない。また英語のミュージカル音楽をみんなで一緒に歌うというのは一般的な日本人にはハードルが高いのではないだろうか。