高橋一生、“風変わりな人物”を器用に演じ分ける 映画&ドラマで輝く性格俳優としての素質

 公開中の『九月の恋と出会うまで』で、またも“風変わりな人物”を演じている高橋一生。このところ、この手の役どころへの起用が続いているように思えるが、いまや彼は自身の芸風を確立し、唯一無二のポジションを得ているのではないだろうか。

 高橋といえば、昨秋放送された『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)での好演も記憶に新しい。彼は本作で、プライムタイムでの民放連続ドラマに初主演。人とのコミュニケーションを取るのが少し苦手だけれど、興味のあることには無我夢中で取り組む、そんな“風変わりな人物”を魅力的に演じていた。

 高橋のここ最近の活躍を振り返ると、彼が演じてきた“風変わりな人物”は幾人も浮かび上がってくる。今でこそ出演した映画が立て続けに公開されている高橋だが、参加した『シン・ゴジラ』(2016)が公開されるより以前は、出演作の年間あたりの公開本数は多くはなかった。あの作品で演じた研究員役のアクの強い振る舞いは、私たちに鮮烈な印象を与えるのと同時に、本作に始まったことではないが、個性的な人物を演じられる性格俳優としてのポテンシャルを世間に知らしめたのだ。しかし高橋が演じてきたのは、あの役のような、あからさまに“風変わりな人物”だけではない。

(c)2018映画「億男」製作委員会

 直近だと、まず『億男』(2018)での彼の姿が思い浮かぶ。本作は主人公(佐藤健)のお金を巡る冒険と成長譚を描いているが、そのきっかけをつくるのが、高橋の演じた億万長者であり主人公の親友の男だ。これを高橋はリアルな吃音で演じ、その懸命な発声によって彼の言葉は強い訴えに変わり、本作の数ある主題のうち、友情の存在を浮き彫りにした。

 また、『空飛ぶタイヤ』(2018)で演じたキャラクターも“風変わりな人物”であったように思う。高橋が演じたのは、物語の展開を左右する大きな存在でありながら、出番は少なく、セリフも少なかった。つまり彼は、自身が担う役どころを限られた情報で観客に示さなければならなかったのだが、ほんの些細な目配せで、ただならぬ人物像を描いてみせた。

(c)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会

 さらに『嘘を愛する女』では、“過去”と“嘘”という二つの闇を抱えた男を好演。表向きは好男子でありながらも、どこか空っぽな印象が拭えぬ存在だ。それは、ほんのちょっとした言葉の調子に宿り、メリハリをつけて伝えるのでなく、そこはかとなく感じさせることで役を成立させた。ミステリアスという意味で、これまた“風変わりな人物”だと捉えられるだろう。

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