横浜流星『愛唄』、登坂広臣×中条あやみ『雪の華』……“楽曲モチーフ映画”成功のポイントは?

 その後2000年代に入り、大林宣彦監督が伊勢正三作詞・作曲の往年の名曲をモチーフに『なごり雪』と『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』を手がけ、「楽曲モチーフ映画」というジャンルに“リバイバル”という側面が付け加えられるようになった(同様のパターンで言えば、海外ではすでに『プリティ・ウーマン』という先例があるわけだが)。それからは『涙そうそう』や『未来予想図』(映画版タイトルは『未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜』)、『ハナミズキ』といったように、比較的近い年にリリースされロングヒットを続ける人気曲を中心に映画化。中にはボカロ楽曲からメディアミックスされた小説を経由して映画が作られた『脳漿炸裂ガール』のような変わり種も存在している。

 そんな中で、何故いま改めて「楽曲モチーフ映画」が立て続けに作られたのか。その背景にはいくつかの理由が考えられる。まず大前提として考えられることは、現在の日本映画界が最も重宝している“原作知名度”という点だ。それは漫画・小説・アニメなどを原作とした他の作品にも共通していえることではあるが、それらは既存の明確なストーリーやビジュアルイメージが根付いており、“映画化”というフレーズに対して拒絶されるケースが少なくない。しかし、音楽にはそういった視覚的なイメージが先行しないというメリットがあるため、映画としてのオリジナリティを生み出すことが可能なわけだ。それに加えて、楽曲の知名度によってそれが映像化されたという興味をそそることで、普段映画を観ない観客に対して訴求効果を生み出すこともできる。

『雪の華』(c)2019映画「雪の華」製作委員会

 その反面、実はその“世界観”という非視覚的な漠然としたイメージは想像以上にデリケートだったりもする。今回の2作品に関して言えば、両作とも「余命わずか」というオリジナリティとはかけ離れた題材を扱ってしまっているのだが(以前別のコラム<『僕の初恋をキミに捧ぐ』なぜ映画からTVドラマへ? “少女漫画実写化ブーム”にも変化が>でも指摘した通り、ちょうど“難病映画ブーム”が再燃しはじめていることを踏まえれば、こうした題材を扱うこと自体は充分に納得できる範疇にある)、楽曲としての「愛唄」「雪の華」はどちらも、継続型で未来へ持続する愛の可能性を綴った歌詞であるため、映画と楽曲の間に微妙なズレがを生じてしまう。どことなく、“モチーフ”という言葉がとても便利に使われた感が拭い去れなくなってしまう。

 現在の「楽曲モチーフ映画」にはまだ、前述したような半世紀前の映画黄金期のようなメディアミックス型で柔軟さを携えた時代とは異なり、オリジナル作品不足という課題に向き合おうとしすぎた結果、かえってオリジナリティとはかけ離れたところへと向かってしまう予感が漂っている。今後もこのような作品が増えていく可能性は高いだけに、重要なのは(とくに楽曲の発表から時間を置いて映像化される場合には)オリジナルとなる楽曲の漠然とした雰囲気ではなくバックグラウンドや、歌詞として視覚化された世界観をどのように映画に反映させていくのかということに尽きるだろう。その点で、映画脚本の経験がない楽曲の作者に、脚本家として物語を委ねた『愛唄』は、ひとつの斬新な選択肢を提示してくれたといえるのではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『愛唄 -約束のナクヒト-』
全国公開中
出演:横浜流星、清原果耶、飯島寛騎、中村ゆり、野間口徹、成海璃子、中山美穂(特別出演)、清水葉月、二階堂智、渡部秀、西銘駿、奥野瑛太、富田靖子、財前直見
監督:川村泰祐
脚本:GReeeeNと清水匡
音楽:GReeeeN
主題歌:GReeeeN「約束 × No title」(ユニバーサル ミュージック)
プロデューサー:小池賢太郎
音楽プロデューサー:JIN
配給:東映
(c)2018「愛唄」製作委員会
公式サイト:aiuta-movie.jp

『雪の華』
全国公開中
出演:登坂広臣、中条あやみ、高岡早紀、浜野謙太、箭内夢菜、田辺誠一
主題歌:中島美嘉「雪の華」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監督:橋本光二郎
脚本:岡田惠和
音楽:葉加瀬太郎
製作:映画「雪の華」製作委員会
企画・制作プロダクション:エー・フィルムズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019映画「雪の華」製作委員会
公式サイト:yukinohana-movie.jp
公式Twitter:@yukinohanamovie

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