【ネタバレあり】善悪が無効化されたヒーロー映画『ミスター・ガラス』を徹底考察

 ※本記事には、『アンブレイカブル』、『スプリット』、『ミスター・ガラス』についての重大なネタバレがあります。

 M・ナイト・シャマラン監督の映画について語るときに困ってしまうのは、意外なラストを描く“ドンデン返し”が、監督のトレードマークになるほど恒例となっているからだ。だからシャマラン監督の他の映画の内容を引き継いだ、本作『ミスター・ガラス』に至っては、あらすじを説明するだけで、『アンブレイカブル』(2000年)や『スプリット』(2016年)の重大なネタバレになってしまう。

 だが、本作の本質を語るためには、この3作の展開に触れないわけにはいかない。ここでは、次々にネタバレをしながら、異端の映画『ミスター・ガラス』とは何だったのかを、可能な限り深いところまで掘り下げて考えていきたい。

予想の“斜め上”を行く前衛的続編

 多重人格の連続殺人犯に監禁された少女たちの恐怖を描いた『スプリット』のラストは、シャマラン監督の『アンブレイカブル』を観たことのある観客には、とくに衝撃をもたらした。この2作、じつは同一の世界の物語であり、さらにはスーパー・ヒーローの映画だったことが明かされるのだ。そして同時に、その2つを本格的につなぐであろう続編『ミスター・ガラス』が公開されることも、『スプリット』の上映のなかで発表された。

 ヒーロー映画といえば、「マーベル・シネマティック・ユニバース」に代表されるように、複数の作品で描かれる出来事を同じ世界のなかのものとして、部分的にクロスオーバーする試みが支持を受けている。だから、シャマラン監督の新たなヒーロー・ユニバース映画が、マーベルのように大スケールで展開していくのかもしれないという期待が広がったのだ。

 それは半分当たっていて、半分間違っていた。たしかに本作『ミスター・ガラス』は作品世界をつなげた新しい物語を描く内容だった。だが本作の衝撃的な結末を見れば分かるように、物語は3作目のラストであっさりと幕を閉じてしまった。さらには、クライマックスの対決を作中で予告し、盛り上げるだけ盛り上げておきながら観客の期待に肩すかしを食わせる。本作にはマーベルのような大スケールの戦闘シーンは存在しなかったのだ。そして彼らの戦いは、なんとも後味の悪い地味な結末を迎える。ある意味、さすがシャマラン監督といったところだ。

 しかも、本作の舞台は精神病院。ブルース・ウィリス演じる、「アンブレイカブル(壊れざる者)」こと無敵の肉体を持つデヴィッド。ジェームズ・マカヴォイ演じる、「ザ・ホード(群れ)」こと、 24の人格を持つ多重人格者ケヴィン。そして、サミュエル・L・ジャクソン演じる、先に収容されていた「ミスター・ガラス」こと、並外れた知能を持ちながら極度に壊れやすい肉体を持つイライジャ。いままでの作品に登場した3人の異能者たちが精神科医によって「全ては妄想だ」と指摘され、治療を受けていくのが本作の主な内容なのだ。集められたヒーローやヴィラン(悪役)は次第に追いつめられ、自分の力は本当に妄想なのかもと疑い始める……。いったい、誰がこんな内省的な展開のストーリーを予想しただろうか。

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