『ダムド・タワー -ホスピタル サイト-』インタビュー

仙頭武則が目指す、VRを用いた次なる映像体験 「原点へ帰ることが一番重要」

「映画でしかできないことも模索」

ーー途中ロッカーの中に隠れろと指示を出されるシーンがあります。当然、現実にはロッカーの扉もスペースもないのに、体験中は身体を思わず縮めて隠れている自分がいました(笑)。

仙頭:あのシーンは体験者の方を外から観ていて一番楽しいところです(笑)。襲ってくる者から隠れるために、本当に息を止めて身体もピタッと止めて。最近のホラー映画で言えば、『ドント・ブリーズ』や『クワイエット・プレイス』でもそういうシーンがありましたよね。そういったアイデアもストーリーに組み込んでいきました。

ーー仙頭さん、高橋さんが手がけているということで、ストーリーの展開には、やはり「映画」だなと感じる部分が多々ありました。

仙頭:個人的には、映画というメディアが少し時代遅れになってきたんじゃないかという不安があり、あと10~20年したらどうなってしまうんだろうと思うことがあります。こうしたVRのような新しいメディアで、映画の遺伝子的なものを活用することはできないのかと考えていたところでした。映画的なものにしようと意識して作ったわけではないですが、無意識のうちにその要素が入っているかもしれません。

ーー案内人から指示を出されて、次のルートに進むために扉の位置が360°変わっていく。まさに映画で言う、カット割りのようなイメージでした。

仙頭:その通りです。360°どこを見ても成立するように作っているからこそ、映画的なカット割りは通用しません。だから僕の中では、ステージごとに次の場所に進んでいくまでがひとつのカットのようなイメージでした。このカットを作っていた時、技術者と衝突したのが音なんです。彼らはリアルを追求しようとして、360°どこからでも音が聞こえてくるように作ろうとしてくれる。でも、僕のイメージではカットが変わっているので、後ろの音は聞こえなくなっているから異質感を生み出したかった。音の調整は最後まで大変でした。

ーー本作は平均10分間の作品となっていますが、もっと長い尺にしようという案もあったのですか。

仙頭:高橋洋曰く、これ以上延ばしたら「殺人マシーンになる。やめなさい」と(笑)。

ーー確かに1時間越えの作品にでもなったら最後まで到達できる人の方が少なくなりそうです(笑)。今回はジャンルとしては「ホラー」でしたが、今後別ジャンルの作品構想も?

仙頭:そうですね。次に作るなら、ホラーではなくてまったく違うことができればと思っています。今回は「脅かす」ことが主軸にあったので、次回は物語性を持たせた作品にできればと。映画制作の話法を知った映画監督が真正面から向き合ったらどんな作品を作るのか、試してみたいと思います。

ーーVRによって新しい表現が生まれていく一方、従来どおりの「映画」にはどんなものが求められるでしょうか。

仙頭:最終的には、お客さんがどんなものを選ぶか、そこに答えがあると思っています。映画もアトラクション化が進んではいますが、意外に原点へ帰ることが一番重要なんじゃないかと。本作のような新しい試みは今後も続けていきたいですし、映画でしかできないことも模索しながら、過渡期を知っている僕たち世代だからこそできるものを生み出していきたいですね。

※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記。

(取材・文=石井達也)

■イベント情報
VR DIVE『ダムド・タワー -ホスピタル サイト-』
企画・プロデュース・総合演出:仙頭武則
監修:高橋洋

2018年10月20日(土)~12月24日(月・休)会期中無休
開催時間:平日13:00~22:00、土日祝10:00~22:00(入場は閉館の30分前)
会場:名古屋テレビ塔2F・3F
料金:1,500円(当日券のみ)
   展望セット券2,000円
※12歳以下利用不可
※展望セット券の利用は17時まで
公式サイト:www.damnedtower.com

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