『グッド・ドクター』と『透明なゆりかご』に共通点? 命が交差するドラマが教えてくれたもの

 コミュニケーション能力に秀でている人ならば、空気を読んで大人の事情を察し、暗黙の了解のうちに行動できるだろう。説明する時間をとって相手に「面倒くさい」と思われないよう、ペースに合わせることも簡単なはずだ。しかし、生まれつき障害があると診断されている主人公たちは、大人の事情や曖昧な事柄への対応に戸惑う。

『グッド・ドクター』(c)2018フジテレビ

 『グッド・ドクター』では、小児外科医が医師全体の0.3%しかいない現実を取り上げ、不採算の小児外科を廃止して高齢者向け医療型病院になる計画が進んでいた。成功する確率が低いリスクのある手術を避けようとする医師や経営側の意見に対して「どうして助けてはいけないんですか?」「簡単に諦めてはいけません」など率直に言葉を発し、周囲を戸惑わせながらもレジデントとして湊は少しずつ理解者を増やしていった。

 『透明なゆりかご』のアオイは、些細なミスをするたびに激怒し、いつも不機嫌な妊婦のことを「怒る人の気持ち、ちゃんと分かりたいんです」とおびえながらも、知ろうとしていた。分からないことを曖昧にできない、知らないから知りたい。とりあえず理解したフリで素通りしてしまうのではなく、自分が納得する答えに近づこうとする。

 アオイがアルバイトをする産婦人科医院の由比院長(瀬戸康史)は、「妊娠した女性の身体の中で起きていることは医療的にはわかっていても、気持ちは分かりません。それが無性に悔しく思うこともあります。でも、分からないぶん、分かりたいって思う気持ちは強いです。女性の医師だから分かるって流しているところも、僕は勉強して経験を積んで分かろうとします」と語っていた。

 仕事をしていくうえでコミュニケーションは必要で、誰もが悩まずにはいられない。分からないから曖昧にせず、自分から知ろうとして勉強したり経験を積んで分かろうとする。近くにいる存在だからといって心が通じ合えるのは当たり前のことではなく、誰かの助けを必要とすることや逆に誰かに尽くすことで自分が救われることがある。

 湊もアオイもその真っ直ぐさ故に周囲に迷惑をかける。しかし、その真っ直ぐさは、必要以上に他人の気持ちを推し量り、正面から向き合うことを忘れた“大人”たちとはまったく違う意味を持っていた。決してコミュニケーション能力に秀でたわけではない主人公たちだったからこそ、人と人が“向き合う”ことの意味を改めて私たちに教えてくれたように思う。

 生まれて成長していこうとする命、消える命が交差する場所でその命について深く考えるドラマと出会えた。簡単に解決しない問題を抱えた物語ゆえ、もしかしたら続編があるのでは? 高視聴率で終えた『グッド・ドクター』は続編への期待がふくらむ余韻を残す爽やかなラストだった。残り1話となった『透明なゆりかご』も固唾をのんで見守りたい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
ドラマ10『透明なゆりかご』
NHK総合にて、毎週金曜22:00~放送
出演:清原果耶、瀬戸康史、酒井若菜、マイコ、葉山奨之、水川あさみ、原田美枝子
原作:沖田×華
脚本:安達奈緒子
音楽:清水靖晃
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama10/yurikago/

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