『サバ婚』が描く、一生懸命に恋をすること 奈緒の“あっぱれ”な努力を考える

 というのも、恋をするということは理想的には、もっと自由に、気軽にできればいいのだけれど(現実には、そんな気楽なことは言っていられない場合がしょっちゅうあって)、“一生懸命”にならざるを得ないときがある。そんな時、とても悩む。美里のように、男性が言うところの女性らしさを武器として全面的に駆使していくというのは、はっきり言ってあまりにもストレスフルなことである(だいたい、あんな時間帯にあれだけのサンドイッチを作ってくるなんて、いくら好意を寄せている祐一のためとはいえ、さすがに美里も頑張りすぎている感が否めない)。

 一方、思い返せば、さやかもさやかで“一生懸命”になってきた。ただ、宇佐美の指南のもと、男性のニーズに答えるべく“愛され系ファッション”や“木のポーズ”によるストレッチに至るまで様々な取り組みをしてきたものの、実際に祐一が本当に評価しているさやかの側面はそこじゃないように見受けられる。もちろん、祐一は一連のさやかの努力が実ったこともあって、「印象が変わった」とか言って褒めてくれる。ただ、第5話の終盤でさやかのことを“素敵”だとしたのは、サラリーマンで溢れ返る居酒屋で過ごしたさやかとの時間や、さやかがインドでダンボールを敷いて寝た話が印象に残ったからということだった。要するに、ある程度はさやかの外見的変化とかも影響しているのかもしれないが、居酒屋やインドでの寝泊まりの話のような、小手先の技術で飾らない“素のさやか”が垣間見える時にこそ、良さを見出しているのだ。そんなさやかのことを、祐一は、「強いというか、1人でも生きていけるというか。そういうところが素敵だなって」と評する(さやか本人はあまりその言葉をポジティブに捉えてはいなかったけれど)。

 さやかにしろ、美里にしろ、多かれ少なかれ女性として“一生懸命”になっている中、作中での祐一はどこかそんな女性たちに向けて、「あまり一生懸命になりすぎなくて良い」こと、言い換えれば、男性のために過度に“女性らしく”いなくてもいいのではということを伝える役割を担っているように感じられる。美里も美里で、祐一からはその良さを認められている。新製品のことに関しておよそ3時間に渡って打ち合わせしたことを受けて、「栗原さんって本当に仕事熱心ですよね」と呟く。ただ当然のことながら、ここでいう“熱心”とはあくまで仕事での意味であって、日頃の美里の“あざとさ”を想定している訳ではないし、実際祐一はさやかが考えている以上に、そうした美里の可愛さアピールに対して心を動かされているとは思えない。

 本作のタイトルに含まれる“サバイバル”という単語は、もちろん、半年以内に結婚をしなければならないさやかの立場を言い表すために使われているのであろうが、ある意味、恋愛の中での試行錯誤の様に絡めているとも言えなくもない。これからもさやかはあれこれ悩みながら祐一にアプローチしていくのであろうが、そんなさやかに幸せが訪れることを楽しみにしていきたい。

(文=國重駿平)

■放送情報
『サバイバル・ウェディング』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~放送
出演:波瑠、伊勢谷友介、吉沢亮、高橋メアリージュン、ブルゾンちえみ、前野朋哉、小越勇輝、奈緒、石田ニコル、ついひじ杏奈、山根和馬、風間俊介、須藤理彩、野間口徹、生瀬勝久、財前直見、荒川良々
脚本:衛藤凛
原作:『SURVIVAL WEDDING(サバイバル・ウェディング)』大橋弘祐著(文響社)
音楽:木村秀彬
出演:佐藤東弥
プロデューサー:鈴間広枝、大倉寛子
制作協力:日テレアネックスオン
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/survival-wedding/

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