深夜ドラマの主戦場はテレ東からテレ朝に? 『家政夫のミタゾノ』『おっさんずラブ』の異形さ
一方、「土曜ナイトドラマ」は、『SmaSTATION!!』の後番組として、2017年10月から復活した、新設のドラマ枠である。その第1弾として、三浦春馬主演の『オトナ高校』が放送されたことも記憶に新しいこの枠は、その後、市原隼人と伊藤歩の約11年ぶりの共演が話題となったヒューマンラブストーリー『明日の君がもっと好き』をオンエア。その次の作品として現在放送中なのが、すでに各方面で話題沸騰中のドラマ『おっさんずラブ』という次第である。
2016年の暮れ、テレビ朝日ドラマ制作部の若手による3夜連続の「年の瀬 恋愛ドラマ」オムニバスのひとつとしてパイロット版が制作、オンエアされた『おっさんずラブ』。その好評を受けて、晴れて連続ドラマ化された本作は、モテない30代のサラリーマンが、ある日、上司の男性に“告白”されるという、異色のラブコメディである。主人公“春田創一”を演じる田中圭と、その上司である“黒澤武蔵”を演じる吉田鋼太郎はそのままに、同じく春田に思いを寄せる同僚役に林遣都を起用して展開する、男たちの恋のさや当て合戦。
ご時世柄、いわゆる“桃源郷”としてのBL的な世界観以上に、どうしても、その男性性や女性性の描き方に注視して観てしまう本作だけど、もはや完全にハマリ役となった田中圭の、表情豊かでリアクションの大きい演技の可愛らしさについては、多くの人にとって異論がないところなのではないだろうか。そう、パイロット版ではさほど活躍しなかった春田の幼馴染み役を演じる内田理央、そして突然離婚を言い渡される黒澤の妻役を演じる大塚寧々……このドラマが、単なる“BLもの”に終わるのか、その先へと視聴者を導いてゆくのかは、実はこのあたりの女優陣の、今後の活躍次第であるのではないか。その意味でも、注目の1本と言えるだろう。
ことほど左様に、歴史ある枠の面目躍如な意味合いも強い今クールの「金曜ナイトドラマ」に対して、“若手の実験場”としてのニュアンスも色濃く出し始めたように思える今クールの「土曜ナイトドラマ」。そのテイストの違いを見比べてみるのも一興かもしれない。深夜ドラマと言えば、すっかりテレビ東京の主戦場というイメージが強かったけれど、テレビ朝日の「ナイトドラマ」は、果たしてそれに続く“ブランド”となるのだろうか。ひとまずは、『家政夫のミタゾノ』と『おっさんずラブ』という2つの異形のドラマの先行きに、熱視線を送り続けることにしたい。
■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter
■放送情報
土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15〜放送
出演:田中圭、林遣都、吉田鋼太郎、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、眞島秀和、大塚寧々ほか
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ) 、松野千鶴子(アズバーズ)
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove/
金曜ナイトドラマ『家政夫のミタゾノ』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送(一部地域を除く)
脚本:八津弘幸ほか
監督:七髙剛ほか
出演:松岡昌宏、剛力彩芽、椿鬼奴、内藤理沙、余貴美子
ゼネラルプロデューサー:内山聖子
プロデューサー:秋山貴人、木曽貴美子、椋尾由希子
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/mitazono/